アルメニア共和国
(Republic of Armenia)
出典:外務省 各国・地域情勢(2011年6月現在)
一般事情
1.面積
2万9,800平方キロメートル(日本の約13分の1、旧ソ連邦の中で最小)
2.人口
310万人(2010年:国連人口基金)
3.首都
エレバン
4.民族
アルメニア系(97.9%)、ロシア系(0.5%)、アッシリア系(0.1%)、その他(1.5%)
(アルメニア共和国国勢調査)
5.言語
公用語はアルメニア語(インド・ヨーロッパ語族に属し、独立の一語派をなす。独自の文字を持つ)
6.宗教
主としてキリスト教(東方諸教会系のアルメニア教会)
なお、アルメニアは、国家として、また民族としても、世界で最初に公式にキリスト教を受容した国である(301年)。
7.略史
年月 | 略史 |
---|---|
前4〜3世紀 | 東アルメニアにエルヴァンド朝成立 |
〜前1世紀 | 西アルメニアにソフェネ成立 |
前190年〜後10年頃 | アルタシェス朝古代アルメニア王国成立 |
1〜5世紀 | アルサケス朝の支配、ローマとペルシアにより分割 |
301年 | アルサケス朝のトルダト3世、キリスト教に改宗 |
5〜7世紀 | サーサーン朝ペルシアとビザンツ帝国による分割統治 |
652年 | アラブ勢力により征服 |
885年頃〜1045年 | バグラト朝成立 |
11世紀 | セルジューク朝諸政権により征服 |
1050年頃〜1375年 | キリキア(アナトリア南東部)にアルメニア系王朝 |
14〜15世紀 | ティムール朝、カラ・コユンル朝、アク・コユンル朝による支配 |
16〜18世紀 | オスマン朝とサファヴィー朝によるアルメニア争奪戦 |
1828年 | トルコマンチャーイ条約により東アルメニアがイランからロシアに割譲 |
1918年5月 | アルメニア共和国(第一共和国)成立 |
1920年 | アルメニア・ソヴィエト社会主義共和国成立 |
1922年 | グルジア、アゼルバイジャンと共にザカフカース社会主義連邦ソヴィエト共和国を形成、ソ連邦結成に参加 |
1936年 | アルメニア・ソヴィエト社会主義共和国成立 |
1988年2月 | ナゴルノ・カラバフ帰属を巡るアゼルバイジャンとの抗争が表面化 |
1990年8月23日 | 共和国主権宣言 |
1991年9月21日 | 共和国独立宣言 |
1991年10月 | テル・ペトロシャン大統領就任 |
1994年5月 | アゼルバイジャンとナゴルノ・カラバフ紛争に関し停戦協定締結 |
1996年9月 | テル・ペトロシャン大統領再選 |
1998年3月 | コチャリャン大統領選出 |
2003年3月 | コチャリャン大統領再選 |
2008年2月 | サルグシャン大統領選出 |
政治体制・内政
1.政体
共和制
2.元首
セルジ・サルグシャン大統領(任期5年、2008年2月に選出)
3.議会
一院制(任期4年、定数131、前回選挙は2007年5月12日)
4.政府
(1)首相 チグラン・サルグシャン
(2)外相 エドワルド・ナルバンジャン
5.内政
- 1995年7月の議会選挙で与党勢力「共和国ブロック」が圧勝、同時に新憲法も国民投票で採択された。
- 1996年9月、新憲法の下での最初の大統領選挙が実施され、テル=ペトロシャン大統領が再選されたが、ナゴルノ=カラバフ問題をめぐり1998年2月辞任。選挙の結果、1998年4月、前首相でナゴルノ=カラバフ出身のコチャリャン大統領が就任(2003年3月に再選)。
- 1999年10月、国会内で首相、国会議長を含む8名の要人が死亡する銃撃事件が発生したが、その後の政情は安定。2008年2月の大統領選でコチャリャン大統領の路線を引き継ぐサルグシャン首相が当選(現大統領)。テル=ペトロシャン大統領率いる野党勢力が抗議行動を起こし当局と衝突、死傷者が発生したのを受け非常事態宣言が発出されたが、その後事態は顕在化し、20日後に宣言は解除。
外交・国防
1.外交基本方針
- 隣国であるトルコ及びアゼルバイジャンとは対立関係にあり、ロシアとの関係が強固。外交関係のないトルコとは2009年10月に「外交関係樹立に関する議定書」及び「二国間関係発展に関する議定書」が署名されたが、それ以降関係正常化の作業は進んでいない。グルジア、イランとは良好な関係を維持する。
- 経済的にはロシアの他に欧米諸国、中東、アジアなど各地域諸国との均衡のとれた関係の発展をめざしており、欧米諸国との結びつきも緊密になってきている。
- 外交上の最大の課題はナゴルノ・カラバフ紛争(1988年にアゼルバイジャン領内のナゴルノ・カラバフ自治州のアルメニアへの帰属変更を巡って開始された紛争)の解決。1994年5月、ロシア及びOSCEの仲介により停戦が合意されており、現在米・仏・露の仲介により和平の努力が続けられているが、解決の見通しは立っていない。
2.軍事力
総兵力46,684人(陸軍43,772人、空軍2,912人)、準兵力4,748人
ブルガリア軍(OSCE)、チェコ軍(OSCE)、ハンガリー軍(OSCE)、カザフスタン軍(OSCE)、ポーランド軍(OSCE)、英国軍(OSCE)、ロシア軍が駐留
(ミリタリー・バランス2010)
経済
1.主要産業
宝石加工(ダイヤモンド)、機械製作
2.GDP
94億ドル(2010年:IMF)
3.一人当たりGDP
2,845.8ドル(2010年:IMF)
4.経済(実質GDP)成長率
2.6%(2010年:IMF)
5.物価上昇率
8.2%(2010年:IMF)
6.失業率
7.1%(2009年:CIA)
7.貿易額
(1)輸出 12.9億ドル
(2)輸入 41.60億ドル
(2009年:WTO)
8.主要貿易品目
(1)輸出 食料加工品、アルコール・ノンアルコール飲料、硫黄・土類、鉄鉱石、燃料
(2)輸入 穀類、動物性・植物性食用油脂、タバコ類、製薬品、化粧品等日用品
(アルメニア共和国国家統計局統計年鑑)
9.主要貿易相手国
(1)輸出 ドイツ、ロシア、米国、ブルガリア、グルジア、オランダ
(2)輸入 ロシア、中国、ウクライナ、トルコ、ドイツ、イラン
(アルメニア共和国国家統計局統計年鑑)
10.通貨
ドラム(Dram:1993年11月22日導入)(CIS統計委員会)
11.為替レート
1ドル=374.4ドラム(2011年6月現在:アルメニア中央銀行)
12.経済概況
- 主要産業は農業、宝石加工業。輸出の36%を加工ダイヤが占める(2002年)。
- ソ連邦解体と体制転換の混乱に加え、アルメニア大地震、ナゴルノ・カラバフ紛争の影響等によりGDPは1992年(42%減)、1993年(9%減)と連続して激減したが、政府が早くから市場経済化に着手する中で、成長率は1994年にはプラスに転じ、2004年に10.1%、2005年に14%、2006年に13.4%、2007年には13.7%と高い水準で推移。
- 2003年2月にWTO正式加盟。
経済協力
1.日本の援助実績
((1)〜(3)は、何れも交換公文ベース)
(1)有償資金協力 318.08億円(2009年度までの累計)
(2)無償資金協力 65.80億円(2009年度までの累計/文化・草の根無償等を含む)
(3)技術協力実績 23.18億円(2009年度までの累計)
2.主要援助国
日本、米、独、仏、英
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2005 | 米 53.3 | 独 30.0 | 仏 25.2 | 蘭 11.6 | 英 6.2 | 148.1 |
2006 | 米 64.9 | 独 16.7 | 仏 14.1 | 蘭 8.5 | 英 8.4 | 135.0 |
2007 | 日本 85.2 | 米 79.9 | 独 22.5 | 仏 8.5 | 英 7.5 | 230.7 |
2008 | 米 93.9 | 日本 57.7 | 独 27.9 | 仏 5.5 | ノルウェー 3.3 | 208.7 |
2009 | 日本 98.7 | 米 78.5 | 独 31.0 | 仏 5.7 | ノルウェー 3.1 | 235.0 |
(出典:DAC/International Development Statistics )
二国間関係
1.政治関係
(1)国家承認日 1991年12月28日
(2)外交関係開設日 1992年9月7日
(3)在日アルメニア大使館開設 2010年7月
日本は在ロシア日本大使館がアルメニアを兼轄。
2.経済関係
日本の対アルメニア貿易(2010年:財務省貿易統計)
- 輸出 13億円(建設用・鉱山用機械、電気機器等)
輸入 3.0億円(化学製品、有機化合物、たばこ等)
3.文化関係
文化無償協力
1999年度 国立交響楽団に対する楽器・音響機材供与(50百万円)
2001年度 マテナダラン古文書館に対する古文書保存機材供与(50百万円)
2002年度 アルメニア国立オペラ・バレエ劇場に対する音響機材供与(30百万円)
2004年度 エレバン・スポーツ文化センターに対する音響機材供与(43百万円)
2008年度 エレバン国立音楽院に対する一般文化無償資金協力(42.8百万円)
2009年度 アルメニア国立美術館美術品修復機材整備計画(27.9百万円)
4.在留邦人数
5人(2011年5月現在)
5.在日当該国人数
29人(2011年6月現在:法務省)
6.要人往来
(1)往(1993年以降)
年月 | 要人名 |
---|---|
1999年10月 | コーカサス友好親善ミッション(中山太郎衆議院議員団長) |
2011年5月 | 徳永久志外務大臣政務官 |
(2)来(1922年以降)
年月 | 要人名 |
---|---|
1992年10月 | バグラチャン副首相(旧ソ連邦支援東京会議) |
1999年2月 | ミカエリャン・エネルギー大臣 |
1999年8月 | オスカニャン外相 |
2001年6月 | オスカニャン外相(コーカサス三カ国展) |
2001年12月 | コチャリャン大統領(公式実務訪問) |
2005年6月 | マルガリャン首相(博覧会賓客) |
2009年11月 | ナルバンジャン外相(外務省賓客) |
7.二国間条約・取極
1996年6月 旧ソ連邦との間で結んだ条約の承継を確認
2005年6月 日・アルメニア技術協力協定署名