ボリビア多民族国
(The Plurinational State of Bolivia)
出典:外務省 各国・地域情勢(2011年6月現在)
一般事情
1.面積
110万平方キロメートル(日本の約3倍)
2.人口
1,043万人(2010年 国家統計局)
3.首都
ラパス(憲法上の首都はスクレ)
4.民族
先住民55%、混血32%、欧州系13%
5.言語
スペイン語(他にケチュア語、アイマラ語)
6.宗教
国民の大多数(95%以上)はカトリック教
7.略史
年月 | 略史 |
---|---|
1825年 | スペインより独立 |
1964年〜1982年 | 軍事政権 |
1982年〜1985年 | シーレス・スアソ大統領(民政移管) |
1985年〜1989年 | パス・エステンソロ大統領 |
1989年〜1993年 | パス・サモラ大統領 |
1993年〜1997年 | サンチェス・デ・ロサダ大統領 |
1997年〜2001年8月 | バンセル大統領 |
2001年〜2002年 | キロガ大統領 |
2002年8月〜2003年10月 | サンチェス・デ・ロサダ大統領 |
2003年10月〜2005年6月 | メサ大統領 |
2005年6月〜2006年1月 | ロドリゲス大統領 |
2006年1月〜現在 | モラレス大統領 |
政治体制・内政
1.政体
立憲共和制
2.元首
ファン・エボ・モラレス・アイマ大統領
3.議会
二院制(上院36名、下院130名)
4.政府
(1)首相名 なし
(2)外相名 ダビッド・チョケワンカ・セスペデス
5.内政
ボリビアは、1982年に民政移管を達成した後、民主化・市場経済化に向けた改革を推進してきたが、近年、市場経済化に伴う貧困や貧富の格差問題の悪化を背景として、先住民を中心とする反政府運動が頻発化した。
2003年10月、政府による対米天然ガス輸出計画の推進を機に、右に反発する先住民団体を中心とする暴動が発生し、サンチェス・デ・ロサダ大統領は退陣に追い込まれた。副大統領から繰り上がり就任したメサ大統領は、天然ガス輸出政策に関する国民投票、緊縮財政政策の実施等、各種改革に努めた。しかしながら、より資源ナショナリスト的な要求を掲げ、貧しい先住民層を中心とする西部地域住民と、豊富な資源を有し、地方自治の強化を求める東部地域住民との対立が深まり、再度国内道路封鎖等の抗議行動が過激化し、2005年6月、メサ大統領は辞任、憲法上第3位の継承権を有するロドリゲス最高裁長官が大統領に就任した。
2005年12月、大統領選を含む総選挙が前倒し実施され、左派先住民指導者のモラレス社会主義運動党(MAS)候補が、保守派のキロガ民主社会勢力(PODEMOS)候補を押さえ、53.7%の票を獲得して当選し、2006年1月に就任した。
モラレス大統領は、貧富格差の是正、先住民の権利拡大を掲げ、新憲法制定の実現を目指した。また、米国主導の麻薬撲滅政策や急速な経済自由化に強く反対し、天然資源による収益のボリビア国民への一層の還元を主張。2006年5月には、炭化水素資源(天然ガスが中心)の「国有化」に係わる大統領令を発出した(実際には、株式の過半数取得を通じ、生産・輸送・精製・販売・価格決定に関する国家管理を強化する内容)。2007年11月には、鉱業税制改正法を公布した。
野党及び比較的豊かな東部4県は、新憲法制定の試みに反対し、地方自治の強化を要求。2008年5月から6月にかけて東部4県が独自の自治憲章の制定の是非を問う県民投票を順次実施、いずれも80%以上の賛成を獲得した。モラレス政権は、反対勢力との対話を達成できないまま、新憲法制定国民投票を延期した。他方で、国会で可決された大統領、副大統領及び各県知事の不信任国民投票実施法案に基づき、8月、不信任国民投票が実施され、大統領及び副大統領は信任(支持率67.41%)、ポトシ県、オルロ県及び東部4県知事も信任された。その後、政府と反対勢力の対立は一時激化したが、9月、南米諸国連合(UNASUR)等国際社会の働きかけにより漸く両者の対話が再開され、10月、地方自治や先住民の扱い等を含め新憲法に係る政治的合意が達成された。
上記合意を踏まえ、2009年1月に新憲法制定の是非を問うための国民投票が実施された。その結果、先住民の権利拡大、地方分権推進、農地改革・土地所有制限、天然資源の国家による所有等を定めた新憲法が61.43%の支持を得て、2月に発布された。新憲法に基づく具体的な政策は、今後、大統領令又は新大統領・新国会の下において制定される法律により定められる予定。
また、新憲法に基づく、大統領選挙・総選挙が2009年12月に実施され、過去最高の94.55%の投票率のもと、モラレス大統領が64.22%の支持率を獲得し、再選された。2010年1月、モラレス大統領の第二期新政権(任期5年)が発足した。
なお、2009年3月、国名を「ボリビア共和国」から「ボリビア多民族国」に変更した。
外交・国防
1.外交基本方針
近隣諸国及び米国をはじめとする先進諸国との関係強化が従来ボリビア外交の基本であったが、モラレス政権の下、対米関係、地域統合等に関し路線変更傾向(FTAAへの消極的対応、ベネズエラやキューバへの接近)が見られるほか、新たなパートナー(イラン、中国、ロシア等)との関係構築を模索している。特に対米関係は、麻薬対策が基軸となっているが、モラレス政権下のコカ葉栽培の合法化問題、FTA交渉、アンデス貿易促進・麻薬根絶法(ATPDEA)による関税優遇措置の扱いを巡り、微妙な状況が続いており、2008年9月には、ボリビアは駐ボリビア米国大使に対しペルソナ・ノン・グラータを宣言し、米国はこれに伴いボリビアに対するATPDEAの適用を停止している。チリとの間には「海への出口」問題を巡り、外交関係はない(領事関係のみ)。
2.軍事力
(1)予算 約3億5,700万ドル(2010年予算、ミリタリーバランス2010)
(2)兵役 徴兵制
(3)兵力 陸軍34,800人、海軍4,800人、空軍6,500人(ミリタリーバランス2010)
経済(単位 米ドル)
1.主要産業
鉱業(亜鉛、錫、鉛)、農業(大豆、木材、砂糖)
2.GNI
161億米ドル(2009年世銀)
3.一人当たりGDP
1,844米ドル(2010年中銀)
4.GDP成長率
4.0%(2010年中銀)
5.物価上昇率
7.18%(2010年国家統計局)
6.失業率
7.7%(2007年ECLAC)
7.総貿易額
(1)輸出 69.56億ドル(2010年国家統計局)
(2)輸入 53.66億ドル(2010年国家統計局)
8.主要貿易品目(2009年国家統計局)
(1)輸出 天然ガス、亜鉛、鉛、銀、大豆、錫
(2)輸入 自動車、鉄鋼製品、ゴム製品
9.主要貿易相手国(2010年国家統計局)
(1)輸出 ブラジル、米国、アルゼンチン、韓国、日本、ペルー、ベネズエラ
(2)輸入 ブラジル、アルゼンチン、米国、中国、ペルー、日本、ベネズエラ
10.通貨
ボリビアーノス
11.為替レート
1米ドル=7.00ボリビアーノス(2011年3月)
12.経済概況
ボリビアは、農業(大豆、砂糖等)、鉱業産品(亜鉛、錫、天然ガス等)を中心とする一次産品への依存率が総輸出の約8割を占め、国際価格の影響を受けやすい経済構造。
1985年から新経済政策を導入し構造調整を推進した結果、比較的安定した経済成長を保っていたが、1999年以降、ボリビアは深刻な経済難に直面し、富の偏在、失業問題等が深刻化した。2001年には「拡大HIPC(重債務貧困国)イニシアティブ」の適用を受けた。2004年はIMFとの合意により、新税導入及び緊縮財政による財政赤字の削減を実現した。
財政難の打開のため、天然ガスの対米輸出を推進しようとする政府に対し、天然ガス収入が国民の大半に裨益していないとして、先住民団体を中心とした反発を招き、2003年10月には暴動に発展するに至った。かかる動きを受け、議会は、2005年5月、天然ガス関係外資企業に対し、より高率の税を課す新法(新炭化水素法)を採択した。これにより歳入は大幅に増大し、財政赤字も対GDP比1.6%まで削減された。モラレス政権下では、天然資源国際価格の上昇を背景に、安定した経済成長、外貨準備高増大、財政黒字等のマクロ経済面での健全化が達成され、2007年〜2008年、食料品価格の高騰によりインフレ率が上昇したものの、2009年にはほぼ0%に抑えた。しかし、2010年には7%強となった。
国際金融危機の影響としては、(1)第1次産品(鉱物、農産物)の国際価格の下落による悪影響、(2)近隣諸国の需要低下による二次的影響、(3)在外ボリビア人からの本国送金の減少が考えられるが、金融制度の未発達、潤沢な外貨準備(近年は常にGDPの50%を超える)等により、比較的、影響は小さかった。
モラレス政権は、資源収入のボリビア国民へのより多くの還元を強く主張し、天然ガスを中心として資源ナショナリズム色の強い政策を展開。特に2006年5月の「炭化水素資源国有化」に係る大統領令発出およびこれに伴うガス輸出価格大幅引き上げの意図表明は内外の大きな波紋を呼んだ。その他、電力部門の国有化、鉱業部門や農地の扱いについても新政策の導入が行われつつある。
13.対外債務
29.41億ドル(2010年12月、中銀)
経済協力
1..日本の援助実績(2009年度迄の累計)(単位:億円)
(1)有償資金協力 470.26(E/Nベース)
(2)無償資金協力 863.28(E/Nベース)
(3)技術協力実績 646.92(JICA実績ベース)
2.二国間主要援助国(2008年)(単位:百万ドル、DAC集計)
(1)米国(123.82) (2)西(93.00) (3)独(52.70) (4)オランダ(41.43) (5)デンマーク(36.22) (6)日本(35.48)
二国間関係
1.政治関係
1914年4月13日外交関係樹立。1942年、ボリビアが第2次世界大戦に参戦し、外交関係が途絶、1952年12月20日外交関係再開。
日本人移住者・日系人の活躍、日本の積極的な経済技術協力の実施等により良好な友好協力関係にある。2009年に日本人移住110周年を迎えた。
2.経済関係
(1)対日貿易
- (イ)対日貿易額(2010年、日本財務省貿易統計)
- 輸出 254.8億円
輸入 94.7億円 - (ロ)主要品目
- 輸出 亜鉛鉱、鉛鉱、ごま、大豆、ニット製品
輸入 自動車・自動車部品、電気機器、一般機械、化学製品
(2)日本からの直接投資
- 1,223万ドル(2008年、国家統計局)
3.文化関係
毎年秋にラパス市にて日本文化週間を開催。文化無償を毎年1件程度実施。毎年3名程度の研究留学生を日本に送り出している
4.在留邦人数・日系人
在留邦人数 2,808人(2010年10月)
日系人 11,350人(推定)
5.要人往来
(1)往(1993年以降)
年月 | 要人名 |
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1993年 | 林屋永吉元駐ボリビア大使(特派大使) |
1995年 | 清子内親王殿下 |
1997年 | 松永信雄政府代表(特派大使) |
1999年 | 清子内親王殿下(移住100周年記念式典)、山下徳夫衆議院議員(移住100周年記念式典) |
2001年 | 江田衆議院議員(麻薬サミット)、佐々木参議院議員(麻薬サミット) |
2002年 | 今村外務大臣政務官、自見庄三郎衆議院議員(特派大使) |
2004年 | 稲嶺沖縄県知事、西銘参議院議員(オキナワ移住地入植50周年祭) |
2006年 | 有馬龍夫政府代表(特派大使) |
2007年 | 西村康稔衆議院議員、大塚拓衆議院議員(日本・ボリビア友好議員連盟) |
2009年 | 常陸宮同妃両殿下(移住110周年記念式典) |
2010年 | 吉良外務大臣政務官(特派大使)、高橋経済産業大臣政務官、内藤総務副大臣 |
2011年 | 田嶋経済産業大臣政務官 |
(2)来(1990年以降)
年月 | 要人名 |
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1990年 | オシオ・サンヒネス副大統領、パス・サモラ大統領(即位の礼)、フォルトゥン無任所大臣、ガルシア企画調整大臣 |
1991年 | ガルシア企画調整大臣、バルダ上院議長、パス・サモラ大統領(公式実務訪問)、イトゥウルデ外相、ドリア・メディーナ企画調整相、ブランコ蔵相 |
1994年 | アラニバル外相(外務省賓客) |
1995年 | コシオ蔵相、レヴォージョ資本化政策担当大臣、アラニバル外相(リオ・グループトロイカ外相会合)、ビジャロボス経済開発大臣(アンデス開発公社セミナー) |
1996年 | サンチェス・デ・ロサダ大統領(実務訪問賓客)、アラニバル外相(外務省賓客) |
1998年 | ナヤル内相、ミリャーレス蔵相 |
1999年 | ムリーリョ外相(外務省賓客) |
2005年 | シーレス外相(外務省賓客)、メサ大統領(IDB沖縄年次総会) |
2006年 | チョケワンカ外相(JETRO招聘(三ヵ国展出席)) |
2007年 | モラレス大統領(実務訪問賓客)、キンタナ大統領府大臣 |
2008年 | エチャス鉱山冶金大臣(JOGMEC招待) |
2010年 | モラレス大統領(公式実務訪問賓客)、アルセ経済財政大臣 |
6.二国間条約・取極
1956年 移住協定
1977年 青年海外協力隊派遣取極
1978年 技術協力協定