フィンランド共和国
(Republic of Finland)

出典:外務省 各国・地域情勢(2011年7月現在)

一般事情

1.面積

33.8万平方キロメートル(日本よりやや小)

2.人口

約533万人(2008年)

3.首都

ヘルシンキ(約58万人、2009年)

4.言語

フィンランド語、スウェーデン語(全人口の約5.5%)

5.宗教

福音ルーテル教(国教)、正教会

6.略史

年月 略史
1世紀頃 フィンランド人の定住
11〜12世紀 キリスト教が伝来、東西キリスト教の角逐
1323年 スウェーデン・ロシア間の国境確定
フィンランドは、スウェーデンの一部となる
1809年 スウェーデン、フィンランドをロシアへ割譲
1917年 ロシアより独立、フィンランド共和国成立
1939年 対ソ戦争(冬戦争)
1941〜1944年 対ソ戦争(継続戦争)
1948年 フィンランド・ソ連友好協力相互援助条約締結
1955年 国連加盟
1975年 CSCE(欧州安全保障協力会議)開催(於ヘルシンキ)
1986年 EFTA(欧州自由貿易連合)正式加盟
1995年 EU(欧州連合)加盟
1999年 EMU(欧州通貨同盟)加盟
2002年 ユーロ導入

政治体制・内政

1.政体

共和制

2.元首

タルヤ・ハロネン大統領
(2000年3月就任、2006年3月再任、任期6年)(女性)

3.議会

一院制(任期4年) 200議席

4.政府

(1)首相 マリ・キヴィニエミ(中央党)(2010年6月就任)

(2)外相 アレクサンデル・ストゥブ(国民連合党)(2008年4月就任)

5.内政

2006年1月の大統領選挙では、2000年3月にフィンランド初の女性大統領として就任した、現職のハロネン大統領(社会民主党)が、決戦投票で国民連合党のニーニスト候補を押さえ、大統領に再選された(任期6年)。ハロネン大統領は、2012年1月の大統領選挙をもって退任予定(大統領の3選は憲法で禁止されている)。

2011年4月17日に議会の任期満了に伴う国会選挙が実施され、国民連合党(前政権の与党第2党)が第1党の座を獲得、政権第1党だった中央党は第4党に後退。前政権のユーロ安定化措置等を厳しく批判する真正フィン人党が第3党へと躍進した。真正フィン人党は対ポルトガル支援への反対等を理由に新政権不参加を、また大敗した中央党は選挙直後に下野を表明した。連立交渉の結果、6月22日にカタイネン国民連合党党首を首相とする国民連合党、社民党、左翼連盟、グリーン党、スウェーデン国民党、キリスト教民主同盟の6党による連立政権が成立した。

カタイネン内閣は政策綱領の中で、国際社会、北欧及び欧州の一員として責任を果たす北欧福祉国家・社会としてフィンランドを発展させる、増税(所得税及び付加価値税等は除く)及び支出削減による財政均衡達成を目指す、失業率を5%までに下げる等としている。

外交・国防

1.外交基本方針

(1)ソ連崩壊後のEU志向の外交

2回にわたるソ連との戦争経験を踏まえ、1948年、ソ連との間に友好協力相互援助条約を締結し、国際紛争の局外に立たんとする中立を志向してきた。1991年のソ連崩壊後は、1992年1月に同条約に変わる「基本条約」をロシアと締結し、ロシアとの良好な実務的関係の発展・維持に努めている。

冷戦終結後、西側諸国との外交を活発化し、1995年1月にEUに加盟、EUとロシアの戦略的関係強化を掲げる「ノーザン・ダイメンション」構想を提唱する等、独特の外交を展開している。EUに対する国民の支持も高いが、前政権のユーロ安定化措置に対する政策を厳しく批判する真正フィン人党が2011年国会選挙で躍進した。

(2)軍事的非同盟

冷戦期の「中立政策」から1995年のEU加盟を機に「信頼に足る防衛力を基盤とした軍事的非同盟」へ政策転換。NATOには非加盟であるが、NATOとは1994年5月にPfP(平和のためのパートナーシップ)協定を締結し、NATO主導の国際平和協力活動に積極的に参加している。現政権は、NATO加盟申請の可能性は保持するが、申請はしないとしている。

(3)北欧・バルト海諸国との地域協力

北欧諸国とは北欧防衛協力、共通電力市場などの地域的な枠組みを通じた緊密な協力を推進。また、1980年以来バルト海洋環境保護委員会(HELCOM)の本拠地となり、2009年に採択されたEUバルト海地域戦略の策定過程に深く関与するなど、ロシアを含むバルト海周辺諸国による環バルト海協力において主導的役割を担う国の一つとなっている。

(4)国際平和と開発への協力

コソボやアフガニスタンなどへの国際危機管理活動に約450名を派遣しているほか、持続可能な開発を支援するため、EU・国際機関・非政府組織を通じた開発協力や、アフリカや紛争後の国を始めとする特定の国・地域に対する二国間援助を実施。また、紛争予防及び紛争後の復興を効果的に行うため、「包括的危機管理」の概念の下、民・軍による平和協力活動、開発協力及び人道援助の協調を図っている。

(5)国際機関における多国間協力

国連、EU、欧州安全保障協力機構(OSCE)(1970年代前半のヘルシンキ・プロセスを経て、1975年に欧州安全保障協力会議(CSCE)の設立を導いた首脳会議を主催。)、欧州評議会(Council of Europe)等の国際機関における多国間協力を重視。国連では、2012年国連安保理非常任理事国選挙(任期2013-2014年)に立候補し、国連改革の必要性を訴えている。

2.軍事力

国土防衛を中核としつつ欧州における危機管理への参画と国連平和維持活動及び同人道支援への参画を基本方針とする。

(1)予算 約27.78億ユーロ(2011年予算)

(2)兵役 18歳以上の男子。
      兵役期間は6〜12ヵ月(予備役の上限は60歳、女子は志願制)

(3)兵力 陸16,000人、海3,500人、空2,750人(出典:ミリタリーバランス2011)

経済

1.主要産業

金属機械、電子電気機器製造(携帯電話等)、紙・パルプ等木材関連

2.GDP(名目)

2,392億ドル(2010年、IMF)

3.一人当たりGDP

44,489ドル(2010年、IMF)

4.経済成長率

3.1%(2010年、IMF)

5.物価上昇率

2.8%(2010年、IMF)

6.失業率

8.4%(2010年、IMF)

7.総貿易額

(1)輸出 694.0億ドル(2010年、国連統計)

(2)輸入 682.5億ドル(2010年、国連統計)

8.主要貿易品目

(1)輸出 紙製品、石油類、電子機器

(2)輸入 原油、石油類、自動車、通信機器、医薬品

9.主要貿易相手国

(1)輸出 独(10.0%)、スウェーデン(10.0%)、露(8.9%)、米(7.8%)、蘭(5.8%)

(2)輸入 露(16.0%)、独(16.0%)、スウェーデン(15.0%)、蘭(6.9%)、中国(5.3%)

(2009年、ユーロスタット)

10.通貨

ユーロ

11.経済概要

(1)主要産業

豊かな森林資源を活かした製紙・パルプ及び金属が伝統的2大産業であったが、現在はノキアを初めとする情報通信産業が主要な地位を占めている。

(2)経済動向

2008年金融危機を受け2009年のGDP伸び率は8.0%減となったが、2010年には3.1%に回復、2011年では3.9%と予測されている。輸出は堅調な状況が続くが経済成長に占める影響は減少している。

(3)失業率

2008年の金融危機により雇用状況の悪化が予想されたが、2009年の失業率が10%を超えることはなかった。現在はゆるやかに改善が見られ、2011年4月の失業率は8.2%であり前年同月より1.1%減であった。2011年内はこの回復傾向が続く見通し。

(4)財政状況

2008年の金融危機対策として景気刺激策をとったため2009年に約80億ユーロ、対GDP比4.8%の赤字に転じた。2010年も90億ユーロの赤字であった。2011年も引き続き財政赤字が予測され、現政権では財政均衡策が図られている。

(5)ユーロ導入

北欧で唯一のユーロ当初参加国であり、安定したユーロを支持している。対ポーランド支援等ユーロ安定化措置への対応が、2011年国会選挙の主要争点となり、強硬に反対を唱える真正フィン人党が躍進した。同党は、現連立政権には参加していないが、政権第二党の社会民主党もユーロ参加国への支援に慎重な姿勢をとるなど、今後の支援措置への対応が注目される。

二国間関係

1.政治関係

(1)二国間関係一般

日本は1919年5月にフィンランドを国家承認(事実上の承認)したが、1944年に一時断交。その後1952年に領事・通商関係を回復し、1957年に外交関係が再開された。その後は、良好な二国間関係を維持し、共通関心分野(福祉、情報通信、科学技術、文化・学術交流、貿易等)の様々なレベルで二国間協力が行われている。また、2000年5月には天皇皇后両陛下がフィンランドを訪問され、2004年10月にはハロネン大統領が訪日、2006年9月には小泉総理が訪フィン等、両国間の友好親善関係は一段と深まった。

2009年に日本とフィンランドは外交関係樹立90周年を迎え、記念行事として、年間を通じ東京及びヘルシンキにて、音楽、舞踏などの公演やセミナーなどが開催された。2009年6〜7月には、学術・研究交流の5カ年計画(日本・フィンランド計画)日本側名誉総裁として高円宮妃殿下が、フィンランド側名誉総裁であるハロネン大統領の招待によりフィンランドを訪問された。

(2)二国間における交流

(イ)小泉総理のフィンランド訪問
2006年9月7〜12日まで、ASEM第6回首脳会合出席のため、小泉総理大臣がフィンランドを訪問。ヴァンハネン首相と首脳会談を行い、二国間関係のみならず北朝鮮、イラン、中東等の国際情勢についても話し合われた。また、ハロネン大統領への表敬も行った。
(ロ)カネルヴァ外相の訪日
2007年8月、カネルヴァ外相が訪日し、町村大臣と会談を行い、二国間関係のほか、国際情勢についても意見交換を行った。
(ハ)ヴァンハネン首相の訪日
2008年6月、ヴァンハネン首相が実務訪問賓客として来日し、福田総理大臣との首脳会談・夕食会が行われたほか、天皇陛下が御引見になった。会談では、良好な二国間関係を確認し、気候変動問題を含む国際的諸課題、東アジア及び欧州情勢についての意見交換を行った。
(ニ)ストゥブ外相の訪日
2009年11月、ストゥブ外相が、日フィンランド外交関係開設90周年を記念して、外務省賓客として訪日し、岡田外務大臣と会談を行った。会談では、二国間関係や東アジア情勢、EU情勢その他の国際情勢につき意見交換を行った。

2.経済関係

(1)日本との二国間貿易

(イ)貿易収支
経済危機の影響を受けて、2009年の対フィンランド輸出は大幅に減少。
対フィンランド輸出 対フィンランド輸入 収支
2005年 2,082 1,358 724
2006年 2,800 1,575 1,225
2007年 2,967 1,981 986
2008年 2,438 1,970 468
2009年 797 1,076 -279
2010年 871 1,374 -503

(単位:億円、出典:財務省通関統計)

(ロ)主要輸出入品目(2009年)

(括弧内は二国間貿易全体に占める割合(%))

対フィンランド輸出 自動車(50.1%)、原動機(7.0%)、ゴムタイヤ及びチューブ(5.3%)、科学光学機器(2.2%)、加熱用・冷却用機器(1.8%)他
対フィンランド輸入 通信機(18.0%)、木材(13.3%)、非鉄金属(12.9%)、医薬品(7.4%)、建築用木工品(6.8%)、重電機器(1.9%)他

(出典:財務省通関統計)

(2)日本との投資関係
日本企業にとって、フィンランドは投資先としては、労働争議も少なく、教育水準も高い等のメリットもあるが、人件費が高く、市場規模が小さい等の理由から製造業の進出は低調。フィンランドから日本への投資は小規模なものが中心。

日本の対フィンランド投資金額 フィンランドの対日投資金額
2010年 36億円 △20億円

(単位:億円、出典:日銀「国際収支統計」)

注※ネット・フロー:資本撤退や投資回収を含む。マイナス数値は引揚超過を表す。

(3)投資関連

(イ)仙台フィンランド健康福祉センター事業
 フィンランドと仙台市の行政、研究機関及び産業界の共同事業。仙台市が建設した建物にフィンランドの福祉関連企業が進出し、地元の企業、大学と共同でITを利用した健康福祉機器の研究・開発を行う。2005年3月に、ペッカリネン・フィンランド貿易産業大臣出席のもと、センターの開所式が行われた。同センターには、フィンランドの福祉に関するノウハウを取り入れた特別養護老人施設が併設されている。
(ロ)阿賀野市フィンランドプロジェクト
 新潟県阿賀野市とフィンランドの共同事業。フィンランド型の介護や地域交流を取り入れた特別養護老人ホームが、2009年3月に開所した。
(ハ)愛媛北辰会フィンランド健康福祉プロジェクト
 愛媛県西条市の医療法人北辰会がFWBC(フィンランド健康福祉)プロジェクトの3番目のパートナーとして選ばれ、フィンランド・コンセプトを取り入れた西条市市民病院が2010年9月12日に開所した。

3.文化関係

(1)1978年文化協定締結

(2)2003年3月より2004年4月まで、大規模文化行事「フィンランドを感じよう Feel Finland」が開催された(芸術、学術、技術分野におけるフィンランド側主催の交流イベント)。

(3)2005年には、日・EU市民交流年関連の文化行事が日本・フィンランド両国において開催された。

(4)2009年には、日本・フィンランド外交関係開設90周年を迎え、能公演、茶道裏千家・千玄室大宗匠の訪問、北海道伝統芸能公演、香道紹介などの記念行事が実施された。

(5)2010年には、両国間の学術交流を目的とした「日本・フィンランド計画2007−2010」の名誉総裁を務める高円宮妃殿下がフィンランドを訪問された。

(6)その他、日本の子供に人気のアニメ「ムーミン」(トーヴェ・ヤンソン作)やシベリウス作曲の交響曲「フィンランディア」は日本でも広く知られている。その他、サウナ発祥の地、サンタクロースの国として有名である。

4.在留邦人数

1,326人(2010年10月1日現在)

5.在日当該国人数

599人(2010年12月31日現在の外国人登録者数)

6.要人往来

(1)往(2000年以降)

年月 要人名
2000年5月 天皇皇后両陛下(お立寄り)
2001年9月 片山総務大臣
2002年5月 植竹外務副大臣
2002年8月 綿貫衆議院議長
2004年5月 茂木内閣府情報通信技術担当大臣
2005年11月 横路衆議院副議長(フィンランド国会議長招待)
2006年9月 小泉総理大臣(ASEM第6回首脳会合)
2008年12月 伊藤外務副大臣(OSCE外相理)
2009年2月 高村総理特使
2010年6〜7月 高円宮妃殿下
2011年5月 鳩山前総理大臣(地球の持続可能性に関するハイレベル・パネル第3回会合)

(2)来(2000年以降)

年月 要人名
2000年6月 ラスク教育相(小渕前総理葬儀特使)
2001年1月 ニーニスト蔵相(ASEM蔵相会議)
2001年3月 シーメス第2蔵相(非公式)
2001年4月 ホルケリ国連総会議長(外務省賓客)
2001年5月 サシ国際貿易・EU 担当相
2001年11月 ヘイノネン運輸・通信相
2001年12月 ソイニンヴァーラ公共サーヴィス担当相(第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議出席)
2002年1月 ハッシ開発協力担当相(アフガニスタン復興支援閣僚級会合出席)
2002年 10月 ウオスカイネン国会議長(衆議院議長招待)
2003年10月 ルフタネン運輸通信相(「フィール・フィンランド」関連)
2004年3月 カリオマキ財務相
2004年4月 ペッカリネン貿易産業相
2004年10月 ハロネン大統領(公式実務訪問賓客)、メンカレ社会保健相(大統領に随行)、レヘトマキ外国貿易相(同上)
2004年11月 カーリアイネン国防相
2004年12月 ハロネン大統領(ICFTU世界大会に出席)
2005年3月 ペッカリネン貿易産業相(愛・地球博視察、仙台フィンランド健康福祉センター開所式出席)
2005年5月 トゥオミオヤ外相(ASEM外相会合)
2005年5月 ヴァンハネン首相(博覧会賓客)
2005年6月 ハータイネン教育相
2005年7月 エーネスタム環境相
2006年9月 カスケアラ国防軍指令官
2007年8月 カネルヴァ外相
2007年11月 ヴァパーヴオリ北欧協力担当相
2008年4月 リンデーン通信相
2008年6月 ヴァンハネン首相(実務訪問賓客)
2009年11月 ストゥブ外相(外務省賓客)
2010年1月 カタイネン副首相兼財務相
2010年3月 ヴァパーヴオリ住宅相
2010年5月 ヴァリーン文化スポーツ相(国際体操連盟理事会出席)
2010年10月 レへトマキ環境相(生物多様性条約COP10)
2010年11月 ヴァユリュネン外国貿易・開発相

7.二国間条約・取極

1924年 通商航海条約
1972年 租税条約
1978年 文化協定
1981年 航空協定
1997年 科学技術協力協定