グルジア
(Georgia)
出典:外務省 各国・地域情勢(2011年6月現在)
一般事情
1.面積
6万9,700平方キロメートル(日本の約5分の1)
2.人口
420万人(2010年:国連人口基金)
3.首都
トビリシ
4.民族
グルジア系(83.8%)、アゼルバイジャン系(6.5%)、アルメニア系(5.7%)、ロシア系(1.5%)、オセチア系(0.9%)
(グルジア国勢調査)
5.言語
公用語はグルジア語
6.宗教
主としてキリスト教(グルジア正教)
7.略史
年月 | 略史 |
---|---|
前6世紀 | 西グルジアにコルキス王国成立 |
前4〜3世紀 | 東グルジアにイベリア(カルトリ)王国成立 |
4世紀 | イベリア(カルトリ)王国がキリスト教を国教化。グルジア文字の考案 |
562年 | 西グルジア、ビザンツ帝国により併合 |
6世紀 | 東グルジア、サーサーン朝ペルシアにより征服 |
7世紀後半 | 東グルジア、アラブにより征服 |
975年 | バグラト朝成立。タマラ女王(在位1184年〜1213年)のもとバグラト朝最盛期、南コーカサス全域を領有 |
13世紀以降 | 数次にわたる外敵の侵入、国土の疲弊 |
16世紀以降 | オスマン朝とサファヴィー朝により東西に分割 |
1783年 | ロシア帝国、東グルジアのカルトリ・カヘティア王国を保護国化 |
1801年 | 東グルジア、ロシアに併合 |
19世紀前半 | 西グルジアの諸地方、漸次ロシアに併合 |
1844年 | ロシア帝国、チフリスにカフカース総督府設置 |
1878年 | アジャリア併合によりグルジア制圧完了 |
1918年5月 | グルジア・メンシェヴィキによりグルジア共和国独立宣言 |
1921年2月 | 赤軍チフリス入城、グルジア・ソヴィエト社会主義共和国成立 |
1922年 | アルメニア、アゼルバイジャンと共にザカフカース社会主義連邦ソヴィエト共和国を形成、ソ連邦結成に参加。 |
1956年 | トビリシ事件(民衆集会・運動が軍により流血の弾圧) |
1989年4月 | トビリシ事件(独立回復要求集会へのソ連軍の弾圧) |
1991年4月9日 | 独立宣言 |
1991年5月 | ガムサフルディア、初代大統領に当選 |
1992年1月6日 | 反ガムサフルディア派、大統領官邸占拠。ガムサフルディア大統領、グルジアから脱出 |
1992年2月 | 国家評議会創設。シェヴァルナッゼ元ソ連外相が帰国し、国家評議会議長に就任 |
1995年11月 | シェヴァルナッゼ大統領就任(2000年再選) |
2003年11月 | 野党勢力が議会を占拠、シェヴァルナッゼ大統領辞任(バラ革命) |
2004年1月 | サーカシヴィリ大統領就任 |
2007年11月 | 反政府デモ隊と治安当局の衝突により多数の負傷者が出たことを受け、非常事態令が発出。2008年1月に大統領選挙を繰り上げることで事態は収拾 |
2008年1月 | 大統領選挙が行なわれ、サーカシヴィリ大統領が再選 |
2008年8月 | グルジア軍と南オセチア軍の軍事衝突を契機に、ロシアが介入。ロシアは南オセチア及びアブハジアの独立を一方的に承認。 |
政治体制・内政
1.政体
共和制
2.元首
ミヘイル・サーカシヴィリ大統領(任期5年、2008年1月二選)
3.議会
一院制(任期4年、定数150、前回選挙は2008年5月)
4.政府
(1)首相 ニカ・ギラウリ
(2)外相 グリゴル・ヴァシャッゼ
5.内政
- ガムサフルディア初代大統領は、反政府勢力との武力衝突等により、1992年1月に失脚、3月新しい最高権力機関として国家評議会(約60%で構成、メンバーの大半は反共活動家)が創設。同評議会議長にシェヴァルナッゼ元ソ連外相が就任。10月には最高会議議長に選出された。
- テロ行為などが繰り返されてしばらく情勢は不安定であったが、1995年11月、新憲法のもとで大統領選と議会選挙が同時に行われ、シェヴァルナッゼが圧倒的支持を得て大統領に当選(2000年4月再選)、議会選挙でも同大統領派「グルジア市民同盟」が第一党となった。
- しかし、経済の低迷と政府の腐敗を背景として国民の不満が蓄積、2003年11月には議会選の結果を不服とする野党勢力が議会及び大統領府を占拠、結果としてシェヴァルナッゼ大統領が辞任に追い込まれた(バラ革命)。2004年1月に実施された大統領選挙では、政変の中心人物であるサーカシヴィリ氏が圧倒的支持を得て当選した。同年3月には議会比例区の再選挙で与党ブロック「国民運動・民主党」が圧勝。サーカシヴィリ大統領は汚職根絶など改革を積極的に推進。
- 2007年11月、大統領と議会の選挙実施時期を巡って政府と野党側が対立し、野党側デモ隊と治安当局が衝突して多数の負傷者が出た。これを受け政府は非常事態令を発出したが、サーカシヴィリ大統領が大統領選挙を繰り上げ実施し、議会選挙実施時期は国民投票にかける等の方針を発表して事態を収束させた。
- 2008年1月の繰り上げ大統領選では、サーカシヴィリ大統領が野党候補を破り再選した。2008年5月に行われた議会選挙では、与党統一国民運動が150議席中119議席を獲得した。2010年5月に行われた統一地方選でも比例制での与党の得票率は約66%に上がった。
- グルジア国内には、アブハジア(アブハズ人はイスラム教徒)、南オセチア(オセット人はイラン系民族、キリスト教徒)の分離主義地域を抱え、両地域には中央政府の実効支配が及んでいない。(2008年8月、両地域はロシアによりそれぞれ「共和国」として独立承認されるが、現時点でロシアの他に独立承認を行ったのは数カ国のみ。)
外交・国防
1.外交基本方針
- サーカシヴィリ政権は、親欧米路線を明確に打ち出し、NATO加盟を目指しており、トルコ・アゼルバイジャンとの地域協力やGUAM内の協力にも熱心。
- ロシアとは、アブハジア及び南オセチア問題、グルジアのNATO加盟に向けた動き等を背景に緊張関係が続いていた。2008年8月、グルジア軍と南オセチア軍の軍事衝突にロシアが介入したことで、両国間の緊張は武力紛争に発展。EU等の仲介により停戦したものの、ロシアが南オセチア及びアブハジアの独立を一方的に承認。ロシアと外交関係は今も断絶したままである。
2.軍事力
総兵力20,655人(陸軍17,767人、空軍1,310人、国家警備隊1,578人)
ロシア軍が駐留
(ミリタリー・バランス2011年)
経済
1.主要産業
農業、食品加工業、鉱業
2.GDP
117億ドル(2010年:IMF)
3.一人当たりGDP
2,658.0ドル(2010年:IMF推定値)
4.経済(実質GDP)成長率
6.4%(2010年:IMF )
5.物価上昇率
7.1%(2010年:IMF)
6.失業率
13.6%(2009年:CIA)
7.貿易額
(1)輸出 23.59億ドル
(2)輸入 52.76億ドル
(2009年:WTO)
8.主要貿易品目
(1)輸出 くず鉄、金属、輸送用機器、食料品(ナッツ、ワイン、ミネラルウォーターなど)
(2)輸入 燃料、石油製品、輸送用機器、医療品
(グルジア中央銀行年次レポート)
9.主要貿易相手国
(1)輸出 アゼルバイジャン、トルコ、米国、アルメニア、ウクライナ
(2)輸入 トルコ、ウクライナ、アゼルバイジャン、中国、ドイツ
(2010年:国家統計庁)
10.通貨
ラリ(Lari:1995年9月25日導入)(CIS統計委員会)
11.為替レート
1ドル=1.64ラリ(2011年6月現在:グルジア国立銀行)
12.経済概況
主要産業は、茶、柑橘類、果物、たばこ、ブドウ栽培を中心とする農業及び畜産業、紅茶・ワインを中心とする食品加工業、マンガンなどの鉱業。
旧ソ連解体後、一時経済は混乱したが、2004年に政権についたサーカシヴィリ大統領は、汚職撲滅、金融・財政制度改革、市場経済化などの改革を推進。アゼルバイジャン産の石油・ガス輸送のためのパイプライン建設を背景とするサービス部門等の成長に加え、海外直接投資の増大などにより、2005年には9.3%のGDP成長率を記録。
2006年3月に主要貿易国であるロシアがグルジアの主要輸出品であるミネラルウォーター及びワインの禁輸措置を取ったことで、関連産業が深刻な打撃を受けたが、その後徐々に販路開拓に成功したこともあり、2007年には12.4%のGDP成長率を達成。
2008年8月のロシアとの武力衝突及びその後の世界的経済危機はグルジア経済に深刻な影響を及ぼし、2009年はGDP成長率がマイナスとなったが、2010年には6.4%の成長率を達成するまで回復した。
経済協力
1.日本の援助実績
(1)有償資金協力 230.54億円 (2009年度までの累計)
(2)無償資金協力 88.95億円 (2009年度までの累計/文化・草の根無償等を含む)
(3)技術協力実績 17.55億円 (2009年度までの累計)
((1)〜(2)は、何れも交換公文ベース)
2.主要援助国
米、独、スウェーデン、ノルウェー、英
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2005 | 米 72.1 | 独 51.1 | 仏 17.5 | 蘭 12.0 | ノルウェー 8.4 | 198.4 |
2006 | 米 103.2 | 独 46.4 | 日 11.6 | 蘭 11.1 | ノルウェー 7.4 | 210.4 |
2007 | 米 86.8 | 独 38.3 | スウェーデン 10.8 | 英 8.7 | 蘭 7.9 | 244.2 |
2008 | 米 402.1 | 独 70.68 | スウェーデン 27.25 | ノルウェー 13.12 | 英 12.83 | 578.5 |
2009 | 米 279.1 | 独 67.0 | スウェーデン 15.7 | 仏 14.0 | 日 12.3 | 435.9 |
(出典:DAC/International Development Statistics )
二国間関係
1.政治関係
(1)国家承認日 1992年4月3日
(2)外交関係開設日 1992年8月3日
(3)日本大使館開館 2009年1月1日
(4)在日グルジア大使館開設 2007年2月
2.経済関係
日本の対グルジア貿易(2009年:財務省貿易統計)
- 輸出 137億円(自動車、ゴムタイヤ・チューブ等)
輸入 7.0億円(化学製品等)
3.文化関係
文化無償協力
1999年度 国立トビリシ・コンサートホールに対する音響機材(49.7百万円)
2008年度 トビリシ国立大学に対する日本語LL機材(18.7百万円)
4.在留邦人数
22人(2011年6月現在)
5.在日当該国人数
45人(2011年6月現在:法務省)
6.要人往来
(1)往(1993年以降)
年月 | 要人名 |
---|---|
1997年8月 | 中山太郎衆議院議員 |
1999年10月 | コーカサス友好親善ミッション(中山太郎衆議院議員団長) |
2006年7月 | 山中あき子外務政務官 |
2006年8月 | 逢沢一郎衆議院議員 |
2007年5月 | 関口昌一外務政務官 |
2009年5月 | 西村康稔外務政務官 |
(2)来(1992年以降)
年月 | 要人名 |
---|---|
1992年10月 | チクヴァイゼ外相(旧ソ連邦支援東京会議) |
1997年12月 | レキシビリ国務大臣(民間招待) |
1999年3月 | シェヴァルナッゼ大統領(公式実務訪問) |
2001年6月 | メナガリシヴィリ外相(コーカサス三カ国展) |
2005年9月 | チョゴバッゼ経済開発大臣(博覧会賓客) |
2007年3月 | サーカシヴィリ大統領(実務訪問賓客) |
2009年3月 | ヴァシャッゼ外相(外務省賓客) |
2010年3月 | ヴァシャッゼ外相 |
2010年9月 | コヴァリア経済開発大臣(日グルジア経済委員会会員企業との懇談) |
7.二国間条約・取極
1994年4月 旧ソ連邦との間で結んだ条約の承継を確認
2007年3月 日・グルジア技術協力協定署名