カザフスタン共和国
(Republic of Kazakhstan)
出典:外務省 各国・地域情勢(2011年6月現在)
一般事情
1.面積
272万4900平方キロメートル(日本の7倍。旧ソ連ではロシアに次ぐ)
2.人口
1,580万人(2010年:国連人口基金)(中央アジア5ヶ国で2番目)
3.首都
アスタナ(Astana:旧アクモラ。1997年12月10日にアルマティより遷都。
日本はJICAによる新首都アスタナの建設計画作成支援を実施し、基本設計は故黒川紀章氏が担当した)
4.民族
カザフ系(63.1%)、ロシア系(23.7%)、ウズベク系(2.9%)、ウクライナ系(2.1%)、ウイグル系(1.4%)、タタール系(1.3%)、ドイツ系(1.1%)、その他(4.5%)
(国家統計庁国勢調査)
5.言語
カザフ語が国語(ロシア語は公用語)
6.宗教
イスラム教(70.2%)、ロシア正教(26.2%)(国家統計庁国勢調査)
7.略史
年月 | 略史 |
---|---|
14世紀頃まで | 現在のカザフ人とほぼ同じ人種的特徴と、カザフ語とよく似た言語が定着 |
15世紀後半 | 遊牧ウズベク国家から分離し、キプチャク草原(カザフスタン)に勢力を拡大。カザフ・ハン国の成立 |
18世紀初 | ジュンガルとの戦いの中でカザフ人の一体性の意識が明確化 |
18世紀初 | 大ジュズ、中ジュズ、小ジュズの三つの部族連合体に分裂 |
1730年代 | カザフの支配層の一部がロシア皇帝に臣従 |
18世紀中頃 | 清朝にも朝貢 |
1820年代まで | ロシア帝国、南部を除くカザフスタンを直接支配下に収める |
1837-1847年 | ケネサルの反乱(カザフ人による対ロシア反乱) |
1850-1860年代 | カザフスタン南部がロシア帝国に併合、カザフスタン全域がロシアの支配下に(ロシア人農民の大量植民) |
1920年 | ロシア連邦共和国の一部として「カザフ(キルギス)自治ソヴィエト社会主義共和国」成立(首都オレンブルグ) |
1924年 | 中央アジアの民族・共和国境界画定により国境線の変更 |
1925年 | 首都をオレンブルグからクズィルオルダに移し、国名を「カザフ(カザク)自治ソヴィエト社会主義共和国」に変更 |
1929年 | 首都をアルマティ(アルマ・アタ)に移転 |
1936年 | ソ連邦を構成するカザフ・ソヴィエト社会主義共和国に昇格 |
1986年12月1日 | アルマ・アタ事件(カザフ人共産党第一書記コナエフ解任に抗議するデモに対し、内務省軍と警察による弾圧) |
1990年4月24日 | ナザルバエフ大統領就任 |
1990年10月25日 | 共和国主権宣言 |
1991月12月1日 | ナザルバエフ大統領再選 |
1991年12月10日 | 国名を「カザフスタン共和国」に変更 |
1991年12月16日 | 共和国独立宣言 |
1997年12月10日 | 首都をアルマティよりアクモラ(現アスタナ)に移転 |
1999年1月10日 | ナザルバエフ大統領再選 |
2005年12月 | ナザルバエフ大統領再選 |
政治体制・内政
1.政体
共和制
2.元首
ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領
(2005年12月三選、任期は7年)
3.議会
二院制(上院:セナート(定員47名、任期6年(3年毎に半数改選))、下院:マジリス(定員107名、任期5年))
4.政府
(1)首相 カリム・マシモフ
(2)外相 カナット・サウダバエフ
5.内政
(1)ソ連邦カザフスタン共和国共産党第一書記・大統領からそのままカザフスタン共和国大統領に就任したナザルバエフ大統領が、一貫して強力なリーダーシップを発揮して政治・経済改革をすすめ、政情は安定している。同大統領は2005年12月の大統領選挙でも圧倒的支持率(得票率91%:カザフスタン中央選管発表)で再選を果たした。
(2)2007年5月の憲法改正により議会の権限が強化された。一方で、初代大統領に限り三選禁止の適用を除外。2007年8月18日に下院選挙が実施され、与党「ヌル・オタン」が全議席を独占した。また、2008年10月4日に上院選挙が行われ、改選議席すべてを与党「ヌル・オタン」が占めた。
外交・国防
1.外交基本方針
(1)国境を接し、政治・経済面で密接な関係を有するロシアとの良好な関係維持を重視。ロシアを中心とするCIS関連の国際機関(ユーラシア経済共同体、集団安全保障条約機構など)にはあまねく参加している。
(2)中国との関係も重視しており、上海協力機構(SCO)に創立時(2001年)より加盟。
(3)米国、EU、日本とも良好な関係を維持している。
(4)アジア信頼醸成措置会議(CICA)を主導するなど独自の国際的イニシャティブも発揮している。2010年にはOSCE(欧州安全保障協力機構)の議長国をつとめた。
2.軍事力
(1)総兵力49,000人(陸軍30,000人、海軍3,000人、空軍12,000人、その他4,000人)、準兵力31,500人
(ミリタリーバランス2010)
(2)ロシア軍は国内数ヶ所(バイコヌール、サルイシャガン、エンバ)に少数が駐留している(カザフスタンに配備されていた戦略核兵器はロシアに移送済み)。
経済
1.主要産業
鉱業、農業、冶金・金属加工
2.GDP
1,384億ドル(2010年:IMF)
3.一人当たりGDP
8,883.0ドル(2010年:IMF)
4.経済(実質GDP)成長率
7.0%(2010年:IMF)
5.物価上昇率
7.4%(2010年:IMF)
6.失業率
6.6%(2009年:CIA)
7.貿易額
(1)輸出 470億ドル
(2)輸入 383億ドル
(2009年見込み:WTO)
8.主要貿易品目
(1)輸出 石油、石油製品、無機化学品、貴金属、有機・無機化合物
(2)輸入 機械設備、食料品、鉄鋼、鋳鉄製管、中空形材、石油、石油製品、自動車
(カザフスタン共和国財務省関税委員会)
9.主要貿易相手国
(1)輸出 イタリア、中国、ロシア、フランス、オランダ
(2)輸入 ロシア、中国、ウクライナ、ドイツ、イタリア
(カザフスタン共和国財務省関税委員会)
10.通貨
テンゲ(Tenge:1993年11月15日導入)
11.為替レート
1ドル=144.72テンゲ(2011年6月現在:カザフスタン国立銀行)
なお同国のテンゲ変動相場制への移行は1999年4月5日。
12.経済概況
(1)石油、天然ガスなどのエネルギー資源、鉱物資源に恵まれた資源大国。石油埋蔵量は398億バレル(世界の3.2%)、天然ガス埋蔵量1.82兆立方メートル(世界の1.0%)(2009年BP統計)。また、レアメタルを含め非鉄金属も多種豊富である(ウラン、クロムの埋蔵量は世界2位、亜鉛は世界5位)。
(2)旧ソ連崩壊後の苦しい経済状況の中、民営化を中心とする経済改革を推進、米国企業の参加するテンギス油田開発の始動などにより、1996年に独立以来初めてプラス成長を記録した。1998年には農業および重工業の低迷及びロシアの金融危機によりいったんはマイナス成長に転じた(前年比マイナス2.5%)ものの、1999年以降は再びプラス成長に転じ、世界的な石油価格の高騰を追い風に、2000年以降年平均10%という好調な経済成長を維持してきた。但し、2007年以降は金融危機による世界的な景気の減退とともに経済成長率は鈍化。
(3)カスピ海周辺では欧米石油メジャーや日系企業が参画し、大規模な油田開発、探鉱を行っている。原油の輸送ルートについては、従来のロシア経由に加え、コーカサス地域経由での欧州向けの輸出も開始されている。最近では、中国向けのパイプラインも整備された。
(4)2010年までに競争力において世界の上位50カ国入りを目指すという目標を設定し、エネルギー・鉱物・資源開発への外資導入を軸に発展を続けている。しかし、産業構造が石油ガス分野に大きく偏っており、長期的安定成長のためにはバランスのとれた産業・経済発展が重要課題であるとの指摘あり。
経済協力
1.日本の援助実績
(1)有償資金協力 約887.88億円 (2009年度までの累計)
(2)技術協力 約119.76億円 (2009年度までの累計)
(3)無償資金協力 約60.51億円 (2009年度までの累計)
2.主要援助国
米国、日本、ドイツ、英国、ノルウェー
暦年 | 1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|---|
2005年 | 日本 66.2 | 米 51.6 | 独 14.1 | 仏 2.6 | 蘭 2.4 | 136.9 |
2006年 | 米 51.5 | 日本 24.9 | 独 11.3 | 仏 3.0 | ノルウェー 2.6 | 96.0 |
2007年 | 米 77.7 | 独 49.6 | 日本 43.3 | 仏 3.5 | ノルウェー 2.5 | 180.8 |
2008年 | 米 157.6 | 日本 37.9 | 独 18.4 | 英 5.4 | ノルウェー 4.9 | 229.6 |
2009年 | 米 97.3 | 日本 37.1 | 独 17.5 | 英 7.0 | 韓国 5.5 | 172.3 |
(出典:DAC/International Development Statistics)
二国間関係
1.政治関係
(1)国家承認日 1991年12月28日
(2)外交関係開設日 1992年1月26日
(3)日本大使館開館 1993年1月20日
2001年1月1日 アスタナ出張駐在官事務所開設
2005年1月1日 大使館をアルマティからアスタナに移転するとともに、アルマティに出張駐在官事務所を開設
(在日カザフスタン大使館は96年2月22日に開館)
2.経済関係
(1)日本の対カザフスタン貿易(2010年:財務省貿易統計)
- (イ)貿易額
- 輸出 193億円
輸入 527億円 - (ロ)主要品目
- 輸出 自動車、鋼管、建設用・鉱山用機械
輸入 合金鉄
(2)日本からの直接投資(2009年:日本銀行)
8億円
カスピ海のカシャガン油田開発には日本の国際石油開発(INPEX)も参加している。
3.文化関係
(両国間には当初旧ソ連との間で締結、その後カザフスタンとの間で承継した文化協定あり。)
文化無償資金協力 9件
1993年度 アルマティ国立大学に対する語学学習機材(48百万円)
1995年度 国立オペラバレエ劇場に対する楽器供与(49.3百万円)
1996年度 メデオスケートリンクに対する氷面整備機材(45.7百万円)
1997年度 カザフスタン国立外国語大学に対する日本語学習機材(39百万円)
1998年度 国立カザフ大学に対する日本語学習機材(29百万円)
1999年度 アルマティ国立高等音楽院に対する楽器供与(48.2百万円)
2000年度 国立音楽アカデミーへの楽器供与(49.8百万円)
2004年度 共和国宮殿(同国最大規模の収容能力を有する国立の文化ホール)への音響機材供与(49.8百万円)
2005年度 A・V・セレズニョフ名称アルマティ・バレエ専門学校に対する教育機材供与(48.6百万円)
その他、日本大使館を通じ広報・文化活動を実施。
4.在留邦人数
118人(2009年10月)
5.在日当該国人数
208人(2011年6月現在:法務省)
6.要人往来
(1)往(1992年以降)
年月 | 要人名 |
---|---|
1992年5月 | 渡辺外務大臣 |
1992年8月 | 武村正義衆議院議員 |
1996年5月 | 武村衆議院議員 |
1997年7月 | 対ロシア・中央アジア対話ミッション(団長:小渕恵三衆議院議員) |
1997年9月 | 麻生太郎経済企画庁長官 |
2000年8月 | 羽田孜元総理 |
2002年4月 | 杉浦外務副大臣 |
2002年7月 | シルクロード・エネルギー・ミッション(団長:杉浦外務副大臣) |
2003年2月 | 矢野外務副大臣 |
2003年6月 | 森下博之議員、齋藤勁議員(OSCE議員会議)、森前総理 |
2003年9月 | 羽田元総理 |
2004年5月 | 橋本元総理(アジア太平洋環境開発フォーラム) |
2004年8月 | 川口外務大臣(中央アジア歴訪) |
2006年1月 | 町村前外務大臣(大統領就任式特派大使) |
2006年8月 | 小泉総理(日本国総理として初の訪問) |
2007年4月 | 甘利経済産業大臣 |
2007年5月 | 中川昭一自民党政調会長、河村建夫議員、小坂憲次議員 |
2007年6月 | 平沢勝栄内閣府副大臣(アジア防災会議) |
2008年5月 | 山本香苗経済産業大臣政務官 |
2010年8月 | 岡田外務大臣 |
2010年11月 | 伴野外務副大臣(欧州安全保障協力機構(OSCE)首脳会合出席) |
(2)来(1992年以降)
年月 | 要人名 |
---|---|
1992年10月 | スレイメノフ外相(旧ソ連支援東京会議) |
1994年4月 | ナザルバエフ大統領(公式実務) |
1994年6月 | ウルクンバエフ経済大臣(第1回日本・カザフスタン経済合同会議) |
1996年10月 | カジェゲルディン首相(カザフスタン支援国会合及び第3回日本・カザフスタン経済合同会議) |
1997年5月 | シュケーエフ経済貿易大臣(アジア開発銀行年次総会(福岡)) |
1998年3月 | ウテムバエフ戦略計画改革庁大臣(民間招待) |
1998年10月 | ブルキトバエフ運輸通信大臣(カザフ投資セミナー) |
1998年12月 | ウテムバエフ戦略計画改革庁大臣(民間招待) |
1999年9月 | トカエフ副首相兼外務大臣(セミパラチンスク支援東京国際会議) |
1999年12月 | ナザルバエフ大統領(第5回日本・カザフスタン経済合同会議) |
2000年6月 | バイゲルディ上院副議長(故小渕前総理合同葬参列) |
2000年12月 | クリケエフ経済大臣(ADBI招待) |
2002年1月 | アブセイトフ外務次官(アフガン復興会議出席) |
2002年12月 | トカエフ国務長官兼外務大臣(外務省賓客) |
2005年6月 | アフメトフ首相(博覧会賓客) |
2006年6月 | アブドラフマノフ政府特使(外務次官)(「中央アジア+日本」第2回外相会合) |
2006年11月 | アビカエフ上院議長 |
2006年12月 | ムハメジャノフ下院議長 |
2007年12月 | イェシモフ農業大臣(第1回アジア・太平洋水サミット)、オラズバコフ産業貿易大臣 |
2008年6月 | ナザルバエフ大統領(公式実務)(タジン外相、シコリニク産業貿易大臣、アフメトフ運輸通信大臣同行) |
2008年12月 | クルムハメド文化情報大臣 |
2009年8月 | サウダバエフ国務長官(第21回国連軍縮会議参加) |
2010年3月 | サウダバエフ国務長官兼外務大臣(外務省賓客) |
7.二国間条約・取極
1994年4月 日ソ間で結んだ条約の承継を確認
1995年3月 カザフスタン政府が日本国政府に対して日ソ租税条約の適用を終了させる意思を通告(これにより同条約は翌96年1月1日以後に開始する各課税年度の所得について失効)
2004年8月 日・カザフスタン技術協力協定署名(2005年6月発効)
2008年12月 日・カザフスタン租税条約署名
2009年12月 同条約 発効
2010年3月 日・カザフスタン原子力協定署名