ノルウェー王国
(Kingdom of Norway)
出典:外務省 各国・地域情勢(2011年6月現在)
一般事情
1.面積
38.6万平方キロメートル(日本とほぼ同じ)
2.人口
約485万8千200人(2010年1月1日現在、ノルウェー中央統計局)
3.首都
オスロ(人口約59万人)
4.言語
ノルウェー語
5.宗教
福音ルーテル派(国教)
6.略史
年 | 略史 |
---|---|
1380年〜1814年 | デンマークと同君連合形成 (1397年〜1523年、北欧三カ国によるカルマル同盟形成) |
1814年 | デンマークがノルウェーをスウェーデンに割譲 |
1905年 | スウェーデンとの同君連合を解消し独立 |
1945年 | 第二次世界大戦後ナチス・ドイツの占領より解放される |
1949年 | NATO加盟 |
1960年 | EFTA加盟 |
1972年 | EC加盟を国民投票で否決 |
1992年 | EEA協定批准(1994年発効) |
1994年 | EU加盟を国民投票で否決 |
政治体制・内政
1.政体
立憲君主制
2.元首
ハラルド5世国王(1991年即位)
3.議会
一院制(任期4年解散なし、議席数169)
4.政府
(1)首相 イェンス・ストルテンベルグ(労働党)
(2)外相 ヨーナス・ガール・ストーレ(労働党)
5.内政
(1)2009年9月14日、任期満了に伴う総選挙で2005年10月から続いていたストルテンベルグ労働党党首を首班とする中道左派連立政権(労働党、左派社会党、中央党)が勝利し、政権の継続が決定した。10月20日、第二次ストルテンベルグ内閣の改造内閣が発足し、ストルテンベルグ首相以下19人の閣僚のうち、ストーレ外相他11名の閣僚は再任することとなった。
(2)現政権は、雇用の確保、福祉の改善・革新・強化、責任ある経済政策を掲げる。特に、雇用、教育、福祉、気候変動を今後4年間の主要課題としている。
(3)2011年9月、統一地方選挙が実施される見通しであり、地方病院の再編問題を含む保健医療政策が大きな争点となることが予想されている。
外交・国防
1.外交基本方針
(1)EUとの関係強化
- (イ)ノルウェーはEU非加盟国。1994年11月、国民投票でEU加盟を否決(1972年にもEC加盟を否決)して以来、EU加盟に関する具体的な議論は行われていない。経済的繁栄を享受している中、EU加盟により得られる利益に懐疑的な国民世論、EU加盟による自国農業及び漁業への影響に対する懸念等が理由。世論は概ねEU加盟賛成3割、反対7割で推移。
- (ロ)EUとの協力関係は緊密かつ広範囲に及び、2010年現在約7000のEU指令を国内適用。1994年の欧州経済領域(EEA)協定を通じEUと緊密な経済関係にあることに加え、シェンゲン協定国(1999年参加)として関係欧州諸国との間の自由往来を実現。また、「EEA資金メカニズム」を通じてEU加盟新興国の社会格差是正プログラムに資金拠出。
- (ハ)対欧州外交を積極的に展開。EUによるソマリア沖海賊対策及び平和構築分野での文民派遣プログラムへの参画はその例。また2009年10月には、ヤーグラン国会議長(当時)が欧州評議会事務総長に就任した。
- (ロ)EUとの協力関係は緊密かつ広範囲に及び、2010年現在約7000のEU指令を国内適用。1994年の欧州経済領域(EEA)協定を通じEUと緊密な経済関係にあることに加え、シェンゲン協定国(1999年参加)として関係欧州諸国との間の自由往来を実現。また、「EEA資金メカニズム」を通じてEU加盟新興国の社会格差是正プログラムに資金拠出。
(2)地域協力の推進
- (イ)北欧諸国、バルト三国、ロシア等の周辺諸国を含む、多分野かつ緊密な地域協力(北欧協力、環バルト海協力、バレンツ協力等)を重視。
- (ロ)196qにわたり国境を接し、近隣のコラ半島に北洋艦隊基地を擁するロシアとの間では、上記地域協力に加えて、経済、エネルギー、原子力安全、漁業、環境、海事、入国管理、教育、文化等の様々な分野で二国間協力を推進。原子力安全分野ではロシアの退役原潜解体プロジェクトを支援。2010年9月、ノルウェーはロシアとの間で、バレンツ海及び北極海の境界画定に関する条約に署名。2011年2月、ノルウェー国会は同条約を承認。
(3)多国間協力を重視
- (イ)国連(トリグヴェ・リー初代国連事務総長はノルウェー人)、NATO(原加盟国)、OSCE等、政治、安保、経済全般にわたり多国間協力を推進。国連への任意拠出金額は世界第3位(開発関連国連機関に対し重点的に拠出)、国民一人当たりの国連拠出額は世界第1位。国連改革の必要性を主張。
- (ロ)国外における軍事活動への参加は国連、NATO等国際機関の枠組によることが原則(2011年1月現在約700名を海外派遣中)。最優先地域はアフガニスタン。2011年3月リビアに対する軍事行動に戦闘機6機を派遣。
(4)国際平和への貢献
- 地域別では中東、スーダン、アフガニスタン等、分野別では軍縮・不拡散、国際貢献活動(軍事・民生両分野)、国連を始めとする各種国際機関、人権・人道及び開発援助に積極的に関与。パレスチナ支援調整委員会(AHLC)議長を務めるほか、スーダン南北包括和平合意にも貢献。また、クラスター弾禁止に向けた「オスロ・プロセス」を主導し、2008年に条約署名式をオスロで開催。2009年から国連人権理事会理事国を務めている。
(5) 開発援助
- (イ)2011年の開発援助(ODA)予算額は約271億クローネ(約4,000億円)で、前年に続き国民総所得(GNI)比1%超。また、2009年のODA実績額の対GNI比率は1%を上回り、OECD開発援助委員会(DAC)諸国中第2位。優先分野は気候変動、平和構築、人権、人道支援、男女共同参画等。
- (ロ)ストルテンベルグ首相のイニシアティブにより、国連ミレニアム開発目標(特に乳幼児死亡率減少と妊産婦の健康改善)の達成を重視。気候変動問題では森林の劣化・減少防止に向けた国際的取組及び途上国支援を重視し、関連する国際協力枠組に積極的に参画。
(6)極北政策の重視
- (イ)ノルウェー政府は当面の最重要外交・安全保障政策として「北部地域戦略」(2006年12月発表)を推進中。同戦略はノルウェー北極圏及びスヴァールバル諸島周辺から北極へと広がる「北部地域」における資源、環境等様々な分野における持続可能な開発と、ロシアを含む諸外国との国際協力の強化を目指すもの。
- (ロ)ノルウェーは北極問題に関する知識・情報の集積及び発信において主導的役割を担うことを希望。北極評議会(AC)及びその関連活動に積極的に参画し、2009年までの約2年間AC議長国を務めた。なお現在、ノルウェー北部トロムソにAC暫定事務局が置かれている。
2.国防
(1)国防費 約392億クローネ(2011年度予算)
(2)兵力 陸軍8,900人、海軍3,700人、空軍5,500人(出典:ミリタリーバランス2011)
(3)徴兵制 19歳〜44歳の男子に徴兵義務、男女ともに志願可能、初回訓練は12ヶ月間
経済
1.主要産業
石油・ガス生産、企業向け・サービス、保健・社会福祉
2.GDP(名目)
4,145億ドル(2010年、IMF)
3.一人当たりGDP
84,444ドル(2010年、IMF)
4.経済成長率
0.4%(2010年、IMF)
5.インフレ率
2.8%(2010年、IMF)
6.失業率
3.6%(2010年、IMF)
7.総貿易額
(1)輸出 117,901百万ドル
(2)輸入 66,998百万ドル
(2009年、国連統計)
8.主要貿易品目
(1)輸出 原油・ガス・石油製品、アルミニウム
(2)輸入 乗用車、石油製品、ニッケル製品
(2009年、国連統計)
9.主要貿易相手国
(1)輸出 英国、ドイツ、オランダ
(2)輸入 スウェーデン、ドイツ、デンマーク
10.通貨
クローネ
11.為替レート
1クローネ≒14.81円(2011年5月)
12.経済概要
(1)主要産業
ノルウェーは、石油・天然ガスを生産(合計、日産約413万バレル(2009年))、欧州諸国を中心に輸出しており、GDPの約1/4、輸出の約7割を占めている。豊富な水資源を利用して(国内電力の98%は水力発電)、電力を多消費する加工産業(アルミニウム、シリコン、化学肥料)が盛ん。また、水産業のGDPに占める割合は0.5%と小さいが、水産物輸出は(商品輸出の5.8%)、天然ガスに次ぐ輸出品目となっている。石油・天然ガスの自国域内生産は、推定埋蔵量(約130億石油換算立方メートル)のうち約40%を既に生産済みであり、今世紀半ばに向け緩やかに減少していくため、石油・天然ガス輸出に依存する経済構造からの脱却が長期的な課題。比較優位のある分野における研究開発や技術革新に、限られた資源を投入して国際競争力を強めていく方針。
(2)景気動向
2010年のノルウェーの経済は、2008年に発生した世界金融危機の影響を受けたが、石油・ガス部門への投資が堅調を維持したことに加え、政府の大幅な財政出動を伴う各種対策の効果もあり景気回復に転じ、他の欧州諸国に比べて堅調に推移した。失業率は他の欧州諸国に比べて低水準(2011年1月現在約3.2%)を維持しているた。
(3)経済政策
金融危機前は、景気抑制のため政策金利は5.75%にまで上げられていたが、金融危機後は景気安定のため政策金利が引き下げられ、2009年6月には1.25%にまで下落。政府及び中央銀行は金融危機対策として金融機関の資金流動性の確保の観点から財政出動を伴う各種政策を講じ、9月にノルウェー中央銀行はノルウェー経済が世界危機を乗り切ったとの見解を示し、10月末には金融危機後先進国で2番目、欧州で最初に政策金利を0.25%引き上げ1.5%とし、12月及び2010年5月にも再度利上げを行い、2011年3月末現在2.0%。
(4)政府年金基金-グローバル
ノルウェー政府は、石油・ガス事業からの収入を、政府年金基金-グローバルとして将来の国民の年金資金にするために積み立てる政策をとっており、専ら外国に投資している。ノルウェー政府には、財政赤字は存在せず、基金の残高も国家予算の3倍の額に及んでいる。2009年の世界的な株式・債券市場の高騰により、政府年金基金−グローバルの運用利回りは過去最高(25.6%)を記録した。2010年末時点の概算評価額は、3兆770億クローネ(約3,890億米ドル)となった。
二国間関係
1.政治関係
(1)1905年(スウェーデンとの同君連合を解消し独立)に外交関係を樹立以来、第二次世界大戦時を除き友好的な二国間関係を維持。 2005年はノルウェーの独立100周年及び日・ノルウェー国交樹立100周年にあたり、5月には天皇皇后両陛下がノルウェーを公式に御訪問になり、ノルウェー国民から大歓迎をお受けになった。その他、国交樹立100周年を記念して両国で様々な記念行事を行い、これらを機に両国の友好関係が一層促進された。
(2)ハラルド5世国王(1991年即位)は親日家であり、2001年3月末には国賓として訪日(非公式も含め計6回訪日)。また、ホーコン皇太子は、愛・地球博ノルウェー・ナショナルデーに出席するため、2005年4月に訪日した。
(3)2003年5月にボンネヴィーク首相(以下、役職は全て当時)が訪日し、小泉総理、川口外務大臣をはじめとする日本側要人と会談を行った。訪日の際に、日・ノルウェー二国間科学技術協力協定が署名された。2004年5月にはペターシェン外相が訪日し、川口外務大臣との外相会談を行った。また2007年10月には、外務省賓客として訪日したストーレ外相と高村大臣との間で、外相会談が行われ、二国間関係及び国際情勢等に関する幅広い意見交換が行われた。
(4)2008年12月には、中曽根大臣が日本国の外相として23年振りにノルウェー(オスロ)を訪問(クラスター弾禁止条約署名会議に出席)し、ストーレ外相との間で二国間外相会談を実施。二国間関係にとどまらず、地域情勢、気候変動問題、保健協力、世界経済等様々な国際的課題につき協力関係を強化することが確認された。
(5)2010年5月には,福山外務副大臣が「気候と森林に関するオスロ会議」に出席のためノルウェーを訪問、ソールハイム環境兼開発援助相及びラーンスタイン外務副大臣と意見交換を行った。
(6)2010年9月、国連総会のマージンにて、前原大臣がストーレ外相と外相会談を行い、安保理改革、気候変動問題、北極問題等につき意見交換を行った。
(7)2010年10月、ソールハイム環境・開発援助大臣が「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」及び「森林保全と気候変動に関する閣僚級会合」出席のため訪日した。
(8)2011年2月、オースラン研究・高等教育相が、両国の科学技術協力の促進のため訪日した。
2.経済関係
(1)貿易関係
1999年以降、2006年を除いて日本側の入超。主要輸出入品目としては、輸出では乗用車・貨物自動車が約5割以上を、輸入では水産物が約4割近くを占める。
- (イ)日・ノルウェー貿易の推移
-
年 日本→ノルウェー ノルウェー→日本 収支 2004 1,226 1,320 -94 2005 1,201 1,258 -57 2006 1,892 1,417 475 2007 1,321 1,957 -636 2008 1,374 2,134 -760 2009 982 1,532 -550 2010 967 1,700 -733 (単位:億円)(出典:財務省貿易統計)
- (ロ)主要輸出入品目(2010年)
日本 → ノルウェー 乗用車(51.8%)、鉄鋼(17.2%)、船舶(5.5%)など ノルウェー → 日本 魚介類(39.1%)、非鉄金属(14.4%)、石油製品(5.7%)など (括弧内は二国間輸出入に占める割合)(出典:財務省貿易統計)
- (ハ)両国貿易の双方に占めるシェア(2009年)
輸出 輸入 日本の貿易に占めるノルウェーのシェア 0.21% 0.29% ノルウェーの貿易に占める日本のシェア 1.03% 2.49% (出典:財務省貿易統計、ノルウェー中央統計局)
(2)投資関係
日本からの直接投資は、石油関連投資を除き、ほぼ全てがメーカーの販売会社または商社の現地法人で、製造業の進出はない。
- (イ)ネット・フロー
年 日本→ノルウェー ノルウェー→日本 2006 19 0 2007 -109 -34 2008 -36 -1 2009 -256 -3 2010 -66 28 (単位:億円)(出典:日本銀行国際収支統計)
注※資本撤退や投資回収を含む。マイナス数値は引揚超過を表す。
- (ロ)主な進出企業
- (i)ノルウェー進出の日本企業
キャノン、豊田自動織機、アラビア石油など、全20社- (ii)日本進出のノルウェー企業
プスネス社(係船装置)、タンベルグデータ社(コンピュータバックアップ装置)、ノルメカ社(災害救急用機材)など、全16社(出典:東洋経済新報社「外資系企業総覧」「海外進出企業総覧」2009年版)
- (ii)日本進出のノルウェー企業
3.文化関係
両国の国交樹立100周年にあたる2005年には、様々な文化交流が行われ、2月に開催されたさっぽろ雪祭りでは、ノルウェー国会議事堂の雪像が制作されたほか、日・ノルウェー交流写真展が行われた。2006年は劇作家イプセンの没後100年、また、2007年は作曲家グリーグ没後100周年にあたることから、日本においても様々なイベントが実現された。また、近年、青少年層で日本のマンガ・アニメが急速に人気を高めており、数年前よりオスロ市内で開催される大規模なアニメ・マンガフェスティバルは、数千人規模の参加者を集めている。
4.在留邦人
838人(2010年10月現在)
5.在日当該国人数
431人(2011年2月現在)
6.要人往来
(1)往(2000年以降)
年月 | 要人名 |
---|---|
2003年4月 | 寛仁親王殿下及び彬子女王殿下(公式) |
2004年4月 | 亀井農水大臣 |
2005年5月 | 天皇皇后両陛下(公式) |
2006年5月 | 杉浦法務大臣 |
2008年12月 | 中曽根外務大臣(「クラスター弾に関する条約署名式」出席) |
2010年5月 | 福山外務副大臣(「気候と森林に関するオスロ会議」出席) |
(2)来(2000年以降)
年月 | 要人名 |
---|---|
2000年5月 | グロンダール国会議長 |
2001年3月 | ハラルド5世国王陛下(国賓)、ヤーグラン外相(同 首席随員)、クヌッセン貿易産業相(同 非公式随員)、グレグッセン漁業相(同 非公式随員) |
2001年12月 | ドーヴォイ児童家族相(第2回児童の商業的性的搾取に反対する世界会議出席) |
2002年1月 | ペターシェン外相(アフガニスタン復興支援閣僚級会合出席) |
2003年3月 | ヨンソン開発協力相(水フォーラム)、ステーンスネス石油エネルギー相(水フォーラム) |
2003年5月 | ボンネヴィーク首相、ドーヴォイ児童家族相、ルードヴィクセン漁業相、ガブリエルセン貿易産業相 |
2004年5月 | ペターシェン外相 |
2005年2月 | コスモ国会議長 |
2005年4月 | ホーコン摂政皇太子殿下(博覧会賓客)、ブレンネ貿易産業相(公式随員) |
2005年5月 | クレメット教育研究相、ブレンネ貿易産業相 |
2005年6月 | ルードヴィクセン漁業相、ドーヴォイ児童家族相 |
2005年11月 | ストールベルゲ法相 |
2006年5月 | ソールハイム開発援助相 |
2007年10月 | ストーレ外相(外務省賓客) |
2009年1月 | ハンセン保健福祉相 |
2010年10月 | ソールハイム環境・開発援助相 |
2011年2月 | オースラン研究・高等教育相 |
7.二国間条約・取極
年 | 条約・取極 |
---|---|
1953年 | 航空協定 |
1956年 | 査証免除取極 |
1957年 | 通商航海条約、司法共助取極 |
1968年 | 租税条約(1992年改訂) |
2003年 | 科学技術協力協定 |