パナマ共和国
(Republic of Panama)

出典:外務省 各国・地域情勢(2011年3月現在)

一般事情

1.面積

75,517平方キロメートル(北海道よりやや小さい)

2.人口

332万人(2010年 会計検査院)

3.首都

パナマシティー

4.民族

混血70%、アフリカ系14%、ヨーロッパ系9%、先住民7%

5.言語

スペイン語

6.宗教

カトリック

7.略史

年月 略史
1501年 スペイン人バスティーダ、パナマ地峡発見
1821年 大コロンビアの一州としてスペインより独立
1903年 コロンビアより分離独立
1914年 米国、パナマ運河完成
1968年 トリホス将軍、クーデターにより実権掌握
1978年 ロヨ大統領就任、民政移管
1983年 ノリエガ将軍が国軍最高司令官に就任
1989年 米国の軍事侵攻、ノリエガ将軍逮捕、エンダラ政権発足
1999年 モスコソ大統領就任、パナマ運河返還、米軍完全撤退
2004年 トリホス大統領就任(故トリホス将軍の実息)
2009年 マルティネリ大統領就任

政治体制・内政

1.政体

立憲共和制

2.元首

リカルド・マルティネリ大統領(任期5年、連続再選禁止)

3.議会

一院制(定員71名)

4.政府

(1)首相 首相職無し

(2)外相 フアン・カルロス・バレーラ(兼副大統領)

5.内政

(1)1983年にノリエガ将軍が政治の実権を握った後続いていた政情不安は、1987年、ディアス・エレラ大佐によるノリエガ将軍非難を契機に深刻化。1989年12月の米軍侵攻及び1990年1月のノリエガ将軍逮捕はパナマ政治が大きく変革される契機となり、エンダラ大統領(アルヌルフィスタ党)が同年12月に就任した。エンダラ政権は1992年前半に延滞債務解消により国際金融機関との関係正常化を実現した。建設部門等の好況を背景に比較的高い経済成長を達成したが、失業、貧困問題が悪化し、国内の治安悪化が見られたため、支持率は低下した。

(2)1994年の大統領選挙においては、民主革命党(PRD)書記長のペレス・バジャダレス候補が勝利し、同時に行われた国会議員選挙でもPRDは同盟党の議席と併せ国会過半数勢力を確保した。ペレス・バジャダレス大統領は、力強いリーダーシップを発揮し、開放経済政策を押し進めた。積極的な投資促進による雇用拡大、大規模な民営化促進、道路及び港湾施設をはじめとする大規模なインフラ整備を行った結果、安定した経済成長を実現させた。1997年9月にはWTO加盟も実現させた。

(3)1998年8月、ペレス・バジャダレス大統領は自己の大統領再選を意図し、憲法改正のための国民投票を行ったが、国民の支持を得ることはできなかった。1999年5月に行われた大統領選挙では、モスコソ・アルヌルフィスタ党党首がパナマ史上初の女性大統領に選出された。

(4)モスコソ政権は、4つの基本方針(貧困緩和、人権擁護、社会正義の実現及び環境保全)の下、各種政策を通じ国民生活の改善を図ることを目標とした。同政権の下、1999年末、米国よりパナマ運河が返還され、米軍も完全に撤退した。2003年11月には、各国からの要人を招いて「独立100周年記念式典」が盛大にとり行われた。

(5)2004年5月に行われた大統領選挙は、トリホス民主革命党(PRD)書記長が勝利し、9月、大統領に就任した。トリホス政権は、憲法改正、税制改正を行うとともに、パナマ運河拡張計画を推進し、国民投票で承認(2006年10月)された。現在、同拡張計画は順調に進んでいる。米国とのFTA交渉も締結した(米議会の承認待ち)。2004年以降7%を超す高い経済成長が続き、失業率も大きく改善。生活保護プログラムや米を始めとする安価な基礎食料品提供も実施された。

(6)他方、治安の悪化が顕著となり、2008年には物価の高騰、都市交通問題などに対する有効な対策が取れないことから、国民の不満が高まった。このような状況の下、2009年5月の総選挙においては、「変革」を訴えるマルティネリ民主変革党(CD)が国民の幅広い支持を獲得し、60%もの高い得票率で大統領に当選。同年7月、就任。マルティネリ政権は、年金改革や教育カリキュラム改革、都市交通問題への対処等、選挙公約の着実な実施により高い支持率を維持。

外交・国防

1.外交

(1)パナマは国際社会との協調を重視し、特定の国やイデオロギーに偏らない外交方針を取っている。

(2)パナマ独立の経緯、運河の建設、米軍駐留等から、米国との関係が経済及び安全保障にとって極めて重要であったが、パナマ運河返還(駐留米軍撤退)後も良好な関係の維持・発展に努めている。米国はパナマにとり最大の貿易相手国である。他方、近年はEUやコロンビア、ベネズエラとの経済関係を拡大。

(3)中南米諸国との連帯も重視し、リオ・グループのメンバーであるとともに、中米統合機構(SICA)のメンバーでもあり、SICA各国と自由貿易協定交渉を進めている(ニカラグア、グアテマラ以外の3カ国との間では発効済み)。

(4)米州機構(OAS)などの国際場裡においても活躍。2007-2008年、安保理非常任理事国。

(5)パナマは、台湾と外交関係を維持しつつも、中国との経済関係を発展させている。中国、パナマ双方に通商事務所あり。

(6)隣国コロンビアとの関係では、国境にあたるダリエン県(ジャングル地帯)へのゲリラ等の侵入、麻薬密輸といった問題がある。両国の国境道路の整備は進んでいない。

2.軍事力

(1)国防軍は、1989年12月の米軍侵攻をもって解体。新たに警察力を主体とした国家保安隊を設置。勢力12,000名(志願制)(ミリタリーバランス2010年)

(2)国家安全保障費269百万ドル(2009年)

経済

1.主要産業

第3次産業
(GDPの70%、労働人口の65%を占める)

2.GDP

各目GDP 240.80億ドル(2009年 会計検査院)
実質GDP 194.14億ドル(2009年 会計検査院)

3.一人当たり実質GDP

5,627ドル(2009年 会計検査院)

4.経済成長率

2.4%(2009年 会計検査院)

5.物価上昇率

2.4%(2009年 会計検査院)

6.失業率

6.6%(2009年 会計検査院)

7.総貿易額

(1)輸出(F.O.B.) 8.2億ドル(2009年 会計検査院)

(2)輸入(C.I.F.) 78.0億ドル(2009年 会計検査院)

8.主要貿易品目

(1)輸出 バナナ、メロン、魚肉、スイカ、キハダマグロ、パイナップル

(2)輸入 電気製品・部品、原油、食料品、輸送機器、化学製品

9.主要貿易相手国

(1)輸出 米国、ラ米、欧州

(2)輸入 米国、ラ米、中国

10.通貨

バルボア

11.為替レート

1バルボア=1ドル(固定)

12.対外公的債務

109.72億ドル(2009年経済財務省)

13.経済概況

(1)地理的優位性とドル化経済、海外投資を促す各種制度の導入などにより、運河、港湾、コロン・フリーゾーン、金融、観光、建設の各セクターが発達。第3次産業が国内GDPの約8割を占める。

(2)第1次及び第2次産業が脆弱であるため、食糧加工品、石油、医療、雑貨、工業製品等の消費財、生産財の大半を輸入に依存しており、貿易収支は恒常的に赤字。

(3)近年のパナマ経済は,建設,港湾サービス,観光セクターの好調を背景に,2004年以降7%以上の成長を遂げ、2007年には12.1%、2008年には10.7%の成長を記録した。2009年は国際的な経済危機の影響から2.4%へと落ち込んだものの、その後は回復。

(4)他国との通商協定締結も積極的に推進されており、二国間自由貿易協定(FTA)については、モスコソ政権下の2003年にエルサルバドル、台湾との間でFTAが発効した後、トリホス政権下では、チリ、シンガポール、コスタリカなど8カ国との間で、また、マルティネリ現政権下では、ニカラグアとの間でFTAが発効。米国、グアテマラの2カ国とは署名が完了し、議会承認、批准を待っている状況にある。

(5)パナマ運河の通航量は年間約1万4船隻(平均約40隻/日)。利用国順位は、米国、中国、チリ、日本、韓国の順。運河の太平洋側及び大西洋側に第三閘門を建設する拡張工事が進められており、運河建設100周年にあたる2014年に完成予定。日本はJBICを通じ8億ドルを拡張工事に融資。

経済協力

1.日本の援助実績(2008年度までの累計)

(1)有償資金協力(E/Nベース)323.21億円

(2)無償資金協力(E/Nベース)33.86億円

(3)技術協力(JICA経費実績ベース)264.18億円

2.主要援助国(2007年、支出純額、単位:百万ドル)

(1)スペイン(10.60) (2)米国(7.28) (3)日本(1.98)

二国間関係

1.政治関係

 友好関係にある。1904年1月7日外交関係樹立、1953年2月20日外交関係再開。1962年相互に大使館開設。

2.経済関係

(1)対日貿易

(イ)貿易額(2010年 財務省貿易統計)
輸出 362億円
輸入 1兆3,593億円
(ロ)主要品目
輸出 マグロ、魚粉、植物
輸入 船舶、乗用車、一般機械、電気機械

(2)日本はパナマ運河の第4位の利用国であるとともに、コロン・フリーゾーンの第6位の利用国として、更には便宜置籍船登録(日本船舶の72%がパナマ船籍)を通じて、パナマと深い経済関係を有している。

3.文化関係

文化無償 25件 8億4,549万円(2009年度まで)

4.在留邦人数

302人(2010年10月現在)

5.在日パナマ人数(外国人登録)

64人(2009年 法務省)

6.要人往来

(1)往

年月 要人名
1981年1月 田中六助通産大臣
1983年2月 永野重雄日本商工会議所会頭
1984年9月 金丸信特派大使(大統領就任式)
1989年5月 佐藤守良衆議院議員(選挙監視団)
1994年9月 原田昇左右特派大使(大統領就任式)
1997年9月 高村正彦外務政務次官(パナマ運河世界会議)
1998年11月 町村信孝外務政務次官
1999年8月 真鍋賢二環境庁長官
1999年9月 亀井久興特派大使(大統領就任式)
1999年9月 渡部恒三衆議院副議長
1999年12月 西村章三特派大使(運河返還式典)
2001年4月 常陸宮同妃両殿下
2002年7月 今村雅弘外務大臣政務官
2002年9月 衆議院自民党議員団
2003年11月 真鍋賢二特派大使(独立100周年記念式典)
2004年9月 泉信也特派大使(大統領就任式)、衆議院自民党議員団
2004年12月 平沼赳夫衆議院議員
2005年2月 近藤基彦、山際大志郎衆議院議員
2006年5月 金田勝年外務副大臣、土屋品子衆議院議員
2006年7月 衆議院議員団(東順治議員他6名)
2006年8月 参議院議員団(片山虎之助議員他3名)、久間章生衆議院議員
2007年1月 松島みどり外務大臣政務官
2007年3月 田中和徳財務副大臣
2008年1月 平井たくや国土交通省副大臣
2009年3月 伊藤信太郎外務副大臣
2009年7月 若林正俊特派大使(大統領就任式)
2010年5月 武正公一外務副大臣

(2)来

年月 要人名
1980年3月 ロヨ大統領(国賓)
1984年 バルレッタ次期大統領
1985年5月 ノリエガ国軍司令官(外務省賓客)
1986年12月 ノリエガ国軍司令官
1987年4月 ノリエガ国軍司令官
1989年2月 ソリス・パルマ大統領代行(大喪の礼)、リッテル外務大臣(大喪の礼)
1990年10月 フォード第二副大統領
1990年11月 エンダラ大統領 (即位の礼)、リナーレス外務大臣(即位の礼)
1991年3月 フェルナンデス国会議長
1994年7月 ムリーノ外務大臣(非公式)
1995年9月 ペレス・バヤダレス大統領(非公式)、ルイス・ガリンド外務大臣
1996年9月 ビジャレアル商工大臣
1997年12月 エンダラ天然資源庁長官
1998年7月 チャップマン経済企画大臣(中南米シンポジウム)
2000年8月 アレマン外務大臣(外務省賓客)、サラサール海運庁長官
2000年9月 アレマン運河庁長官
2000年11月 トリホス民主革命党(PRD)書記長(現大統領)
2003年 アンギソーラ環境庁長官
2005年8月 ルイス・ナバーロ第一副大統領兼外相(日本・中米首脳会議)
2006年2月 アレマン運河庁長官
2006年7月 ルイス・ナバーロ第一副大統領兼外相(パナマ運河セミナー)
2006年9月 バスケス運河担当大臣(IDBセミナー)
2008年5月 アロセメナ第二副大統領
2008年9月 ホセ・ラモン・バレーラ商工会議所会頭
2008年10月 ベンガラ商工大臣、アレマン運河庁長官
2009年6月 バレーラ・パナメニスタ党党首(現副大統領兼外相)
2010年1月 バレーラ副大統領兼外相(FEALAC外相会合)
2010年4月 バジャリーノ経済財務大臣
2010年10月 アリアス環境庁長官(生物多様性条約第10回締約国会議(COP10))、シャマー観光庁長官
2010年11月 バジャリーノ経済財務大臣

7.二国間条約・取極

1985年 パナマ運河代替案調査委員会に関する取極(日、米、パナマ間で締結)
1989年 青年海外協力隊遣取極