イエメン共和国
(Republic of Yemen)
出典:外務省 各国・地域情勢(2011年2月現在)
一般事情
1.面積
55.5万平方キロメートル(日本の約1.5倍弱)
2.人口
約2,358万人(2009年/ 世銀)
3.首都
サヌア
4.民族
主としてアラブ人
5.言語
アラビア語
6.宗教
イスラム教(スンニー派及びザイド派(シーア派の一派))
7.略史
年月 | 略史 |
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紀元前10世紀頃〜 | 古代イエメンの王国はインドと地中海及び東アフリカの貿易の中継地として繁栄 古代ギリシャ人、ローマ人から「アラビア・フェリックス」(幸福のアラビア)と呼ばれる |
9世紀〜 | ザイド派のイマーム(宗教指導者)が支配 |
16世紀〜 | オスマン・トルコが北イエメン地域を支配 |
1839年 | 英国がアデンを占領、以降南イエメン地域を保護領とした |
北イエメン地域では、1918年オスマン・トルコからイマーム王国が独立 その後1962年には軍による共和制革命によりイマーム王制が廃止され、イエメン・アラブ共和国が成立(旧北イエメン) |
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南イエメン地域では、反英運動が激化し、1967年英国から南イエメン人民共和国が独立 1969年マルクス・レーニン主義を標榜する社会主義政権が誕生し、1970年にイエメン民主人民共和国と国名を改めたる(旧南イエメン) 東西冷戦構造もあり、1970年代、1980年代には南北イエメン間でたびたび武力衝突が発生したが、統一への努力は継続された |
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1989年11月30日 | アデン合意により南北統一への途が開かれる |
1990年5月22日 | 南北イエメン統合により現在のイエメン共和国が成立 |
政治体制・内政
1.政体
共和制
2.元首
アリー・アブドッラー・サーレハ大統領
3.議会
代議院は選挙で選出される301名の議員からなり、立法権を有する。議員任期は6年。この他に大統領任命による111名の議員からなる諮問評議会があるが、立法権はなく大統領への助言機関と位置づけられている。なお、イスラム政党も認可されている。
4.政府
(1)首相 アリー・ムハンマド・ムジャッワル
(2)外相 アブー・バクル・アブドッラー・アル=カルビー
5.内政
(1)1990年に南北イエメン統一が達成されイエメン共和国が成立したものの、1994年には南北対立が再燃し内戦(2ヶ月)が発生。旧北イエメン側の勝利により統一は維持された。
(2)従来からイエメンは貧困や地域格差等の経済・開発上の課題を抱えているが、それらに加えて、近年は2009年1月に結成された「アラビア半島のアル・カーイダ」(AQAP)によるテロ、北部のサアダ州を中心とするザイド派武装勢力との武力紛争、南部諸州(旧南イエメン)における分離運動、部族による外国人誘拐といった治安上の課題を抱えている。特にAQAPは、2009年12月デトロイト行き米航空機爆破未遂事件を引き起こし、また2010年10月シカゴ行き貨物機に小包爆弾を仕掛ける爆破未遂事件を起こした。イエメン政府は米国等から協力を得つつ、AQAP対策に取り組んでいる。
(3)イエメンは、このように様々な問題を抱えているが、近年、ソマリア沖アデン湾で頻発する海賊の取り締まりに積極的に取り組み、また、ソマリア等からの難民の受け入れも行っている。
(4)2011年1月のチュニジア政変、その後のエジプト情勢の進展を受け、首都サヌア等においてデモが発生。2月2日、サーレハ大統領は2013年大統領選挙への事実上の不出馬、権力の世襲の否定等を表明した。
外交・国防
1.外交基本方針
(1)アラブ・イスラム世界との連帯強化を目指す。特に、サウジアラビア等湾岸諸国との協力関係の増進を目指している。湾岸諸国はイエメンの安定が利益であることから、イエメンを積極的に支援する姿勢を示している。
(2)テロ対策、海賊対策、貧困削減、等において欧米諸国との関係強化を目指している。特にテロ対策では米国との協力を重視している。
2.軍事力(2009年)
(1)予算 15.5億ドル(2009年/ Military Balance 2010)
(2)兵役 2年(同上)
(3)兵力 66,700人(陸60,000、海1,700、空5,000)(同上)
経済
1.主要産業
石油・天然ガス産業、農業、漁業
2.一人当たりGNI
1,060ドル(2009年/世銀)
3.経常収支
12.5億ドルの赤字(2010年/ イエメン政府統計)
4.GDP成長率
3.8%(2009年/ 世銀)
5.予算(2009年度)
(1)歳入 約1.5兆イエメン・リアル(イエメン財務省)
(2)歳出 約1.9兆イエメン・リアル(イエメン財務省)
6.金・外貨準備高
62.9億ドル(2009年/ 世銀)
7.対外債務残高
62億ドル(2009年推定/ 世銀)
8.総貿易額
(1)輸出(FOB) 59億ドル(2009年/ 世銀)
(2)輸入(FOB) 81億ドル(2009年/ 世銀)
9.主要貿易品目
(1)輸出 石油、コーヒー豆、魚介類、天然ガス
(2)輸入 食料品及び動物(食用)、機械類、化学製品
10.主要貿易相手国(2008年/イエメン政府統計)(2007年/IMF)
(1)輸出 UAE、中国、タイ
(2)輸入 アラブ首長国連邦、中国、サウジアラビア
11.通貨
イエメン・リアル(YR)
12.為替レート
1$=240イエメン・リアル(2010年1〜8月の平均/世銀)
13.経済概況
- 輸出総額の約9割、財政収入の約7割を占め経済の柱である石油生産は約30万B/D(2009年BP統計)。石油生産量は年々低下しており、世銀は2017年頃には枯渇を予測。石油に替わって天然ガスの開発に取り組み、2009年10月から液化天然ガス(LNG)の生産と輸出を開始。LNGの最大生産量は650万トン/年で最低でも20年間生産可能と予想されている(イエメンLNG社)。ただし、このLNG生産をもってしても石油生産の減少による財政収入減を補填できないとの見方が一般的。財政収入と雇用機会の確保のためにも、非エネルギー産業(漁業、観光業等)の振興が急務。2010年には、国際通貨基金(IMF)からの融資を受けるため、イエメン政府は燃料補助金の段階的な削減を含む財政再建策の実施にコミットした。
- 最貧国であり開発需要は大。2006年に第三次貧困削減開発計画(2006年-2010年)を策定。2006年11月、ロンドンで開催された対イエメン支援国(CG)会合では、イエメンの開発に向けた姿勢・努力が評価され、GCC諸国、地域援助機関、欧米ドナー諸国等から総額47億ドル(後に58億ドルにまで増額)にのぼる支援のプレッジ(拠出誓約)がなされた。
経済協力
1.日本の援助実績(2011年1月時点)
(1)無償資金協力(1997〜2009年度まで、交換公文ベース) 666.55億円
(2)技術協力実績(1997〜2009年度まで、JICA経費実績ベース) 94.03億円
(3)有償資金協力(1977〜2009年度まで、交換公文ベース) 608.49億円(除く債務救済)
2.主要援助国
(1)独 (2)蘭 (3)英 (4)米 (5)伊 (6)日(2008年)
(DAC)
3.無償資金・技術協力
人的資源開発、社会・経済基盤整備、保健医療といった基礎生活分野を中心に無償資金協力、技術協力(研修員受入、専門家等)、国際機関を通じた各種資金協力を実施。
近年のソマリア沖・アデン湾での海賊事件の頻発を受けて、新たにイエメンの海上保安能力向上支援を実施。イエメン沿岸警備隊(YCG)から、2008年2名、2009年6名、2010年6名の職員が同研修に参加した。また我が国は、国際海事機関(IMO)に対して、海賊情報センター(イエメン、ケニア、タンザニア)、訓練センター(ジブチ)設置のための支援として14億円を拠出。我が国はさらなるYCG支援を検討中。
無償資金協力としては、2009年度は、地方給水整備計画、ノンプロジェクト無償、貧困農民支援、太陽光を活用したクリーンエネルギー導入計画を実施。草の根無償についても積極的に支援(2009年度は18件を実施)。
二国間関係
1.政治関係
(1)1990年5月22日のイエメン共和国成立に伴い、同23日、国家承認。同25日、外交関係開設。(なお、新国家成立以前には、旧南北イエメンそれぞれを国家承認し、外交関係を有していた。)
(2)1990年7月、アデン出張駐在官事務所を開設したが、1997年12月に閉鎖。
(3)1999年3月、サーレハ大統領がイエメン大統領として初めて来日。その後2005年11月に再度来日。
2.経済関係
対日貿易
- (1)貿易額(2008年)
- 対日輸出 3.7億ドル
対日輸入 17億ドル(イエメン政府統計)
- (2)主要品目
- 輸出 石油、コーヒー豆等
輸入 機械類、自動車等
3.文化関係
2004年我が国は沖縄舞踊公演、日本版画展、日本映画祭を、2005年には伝統能の公演や空手のデモンストレーションを実施。2007年、2008年、2009年とサヌアにて「日本文化週間」を開催し(2009年についてはイエメン第二の都市であるアデンでも開催)、好評を博した。また2005年、イエメンは愛・地球博に参加した。
4.在留邦人数
59人(2011年1月)
5.要人往来
(1)往(1974年以降)
年月 | 要人名 |
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1974年1月 | 小坂善太郎特使 |
1975年8月 | 羽田野忠文外務政務次官 |
1983年7月 | 石川要三外務政務次官 |
1985年7月 | 左藤恵郵政相 |
1987年9月 | 江藤隆美特使(革命25周年記念) |
2000年5月 | 小沢辰夫特使(統一10周年記念) |
2000年9月 | 福田康夫日・イエメン友好協会会長(当時) |
2001年8月 | 丸谷佳織外務大臣政務官 |
2002年9月 | 杉浦正健外務副大臣 |
2005年3月 | 河井克行外務大臣政務官 |
2006年7月 | 伊藤信太郎外務大臣政務官 |
2008年6月 | 宇野治外務大臣政務官 |
2009年12月 | 尾辻元厚生労働相 |
(2)来(1987年以降、主要なもののみ)
年月 | 要人名 |
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1987年10月 | イリヤーニ副首相兼外相(外務省賓客) |
1990年11月 | アブドルガニー大統領評議会メンバー(即位の礼) |
1993年11月 | イリヤーニ計画・開発相(外務省賓客) |
1996年12月 | イリヤーニ副首相兼外相(外務省賓客) |
1997年11月 | シュアイビー教育相(世銀招聘) |
1998年2月 | フセイン水産資源相 |
1998年5月 | ワジーフ石油鉱物資源相 |
1999年3月 | サーレハ大統領(公式実務訪問) |
1999年8月 | ワジーフ石油鉱物資源相 |
2001年11月 | アハマディー漁業資源相 |
2002年1月 | スーファーン計画開発相 |
2002年3月 | カルビー外相(外務省賓客) |
2004年3月 | イリヤーニ水・環境相 |
2005年2月 | アルシャリーフ最高選挙委員長(外務省招聘) |
2005年11月 | サーレハ大統領(実務訪問賓客) |
2007年8月 | ウバード青年・スポーツ相 |
2008年3月 | バハーハ石油鉱物資源相 |
2008年4月 | アルハビー副首相(経済担当)兼計画・国際協力相 |
2008年6月 | アクワ外務次官補(外務省招待) |
2009年2月 | アッタール投資庁長官(外務省招待) |
2009年11月 | ラーシウ沿岸警備隊長官(外務省招待) |
2009年12月 | ムタワッキル産業・貿易相(日・アラブ経済フォーラム出席) |
2010年10月 | ムジャッワル首相(COP10出席) |
2010年10月 | イリヤーニ水・環境相(COP10出席) |
2010年11月 | カルビー外相(外務省賓客) |
2010年12月 | ハイド内務省作戦局長(外務省招待) |
6.二国間条約・取極
1989年9月 青年海外協力隊派遣取極締結
1993年7月29日 青年海外協力隊派遣取極の改定
1993年11月9日 技術協力協定の締結
7.外交使節
(1)難波充典特命全権大使
(2)マルワン・アブドッラー・アブドゥル・ワッハーブ・ノーマン特命全権大使