Deep Breath, Jump! しかし、退職(飛び降りる)前に、求人誌を確認してみよう!
遠い昔「フラッシュダンス」という映画あり、その中でダンサー志望の主人公が、判断を逡巡している時に、恋人が述べた言葉です。
――大きく息を吸って、そして、ジャンプだ。
悩んでも仕方がない、まずは、やってみよう、との事のようである。
公務員を辞めるのもそんな感じでいいのかな?「年収300万円で暮らす」という本がベストセラーに入っているようである。そして、公務員の退職金に対する諸手当等の削減が本格化しそうである。
今年の7月にかなりの人が、現状の退職金を受領するために、職場を離れるという噂が聞こえてきている。本当に、退職金が少し減額される程度で、それでも現在の年収の半額程度と大きいが、退職すべきであろうか。
ちょっと、待ってほしい!
まず、あなたの現在の年収を確認して欲しい。あなたの働きに比べて給与は少ないと感じていられるだろう。しかし、社会一般の人たちは、そうは思っていないことを認識すべきである。公務員の給与は、「高い」のである。
私が退職後、退職時の給与を聞かれて、アバウトに回答すると、そんなにもらっていて何故退職したのですか、早まりましたね、という人がほとんどであった。先日も、現在無職となった大学の同級生に会って聞いてみると、再就職するとしても、500万円など到底望むべくもなく、300万円前後でも職を得られればいいほうとのニュアンスを受けた。
また、職安の出している求人情報の内容を見ると、事務職で月給18万円から20万程度である。税務調査などの職種はないので、税理士業を開業するのでなければ、この事務職の範疇に入ることになる。月給50万円の人など、ほとんどいない現実を直視すべきです。
ほんの一部の成功したサラリーマンを除いて、通常の給与所得者は、年収200万円〜00万円の世界に突入し始めたのです。
私は、税理士資格があるから大丈夫と反論されるかもしれない。しかし、税理士は、全国に税務職員と同程度6万人がアクティブに活動しているといわれている。
税理士資格を取得して開業しても、実務経験のない人には顧客は寄りつかないので、結局、実務経験をつむために15万円から20万円程度の月収で、経験を積まなければならない。OB税理士が今から丁稚奉公ができますか?
顧問先が倒産して税理士事務所の事務員の給与が支払えないというところも、聞こえてきています。月3万円で、会計代行と税務相談を含む契約が、高いと非難される今日この頃です。地方だと、この金額が1万円になるといわれています。私自身も、知り合いの紹介で、月1万円で受けている顧客がいます。
一方で、私にはあまり縁のない世界ですが、月10万〜20万円の顧問報酬を支払っているところがあるのも事実です。要は、実力次第の世界です。
新規開業した税理士が、何のツテもなく事業を始めても、黙っていても食べられる時代ではないのです。税理士会の入会金や年会費等を支払うのが重荷になっている人も多いようです。
それと、税理士の世界は、対法人の仕事が中心であることも留意すべきです。財産のデフレのおかげで、相続税の財産が低下し、それにつれて、相続・贈与に係る税理士報酬も低下傾向になり、不動産の売買も、譲渡損が常態では、税理士報酬も高額が望めません。結局、法人との業務に頼るしかないのです。
以上のように、法人出身のOB税理士でも、退職して、安心して生活できるかどうかわからないのが現状ではないでしょうか。まして、所得、徴収、管理系統の人が退職しても、法人税関係を無理なくこなせないならば、まったく収入の道がない、というのが通常です。
このような状態の中で、年収の半分程度退職金が減額されただけで、退職すべきでしょうか。定年まで職を全うしたほうが、いいと思うのは私だけだろうか。
本稿は、退職金が減額されるというだけで、非指定官職の人が、急遽退職を思い立った人に注意を与えるものです。要は、目先の退職金の減額に幻惑されることなく、定年及び定年後の再雇用も視野に入れて、長期的に判断して、定年前に退職するかどうかを決めていただきたいと思います。
しかし、それ以外の理由で退職されるなら話は別です。退職は、若ければ若いほどいい、と言われていることを付け加えさせていただきます。そうはいっても、経験も知識もない人が辞めて食っていけるほど甘くはないと思いますが。
(2003年4月21日)