タイプ別「辞めるな!キケン!!」

(抜粋・引用:SPA 平成16年12月14日号)

‘熟慮の末の決断’で大失敗してしまったビジネスマンによる転職地獄絵図とは?、となっています。辞める前に、少し考えてはいかがですか、というより当たり前の現実が書いてあるようです。
 それでは、中に入ってみましょう。

総論

‘普通に優秀’なだけで会社を辞めるな! →懐の辞表はとりあえず破るべし!
 森永卓郎氏は「辞めるな!キケン!!」と転職・独立志望の会社員に警鐘をならす。「転職志望者にありがちなのが、転職先や独立後のいいところしか見ていないこと。どんな会社でも、バカな上司や、使えない後輩、理不尽な付き合いが確実に存在します。ウッカリ会社を辞めて、前職のほうが恵まれていた、と後悔しても遅いんですよ。」
 04年ごろから、過去最高水準といえるほど、求職市場が活性化しているという。ならば、それに潜むリスクさえ回避すれば、転職も悪くないのでは?
「現在の求人の中心になっているのは、マネジメント能力のある30代のベテラン層(?て言えるの?)と第二新卒世代のみ。それも、今がピーク。・・・他の層で、転職して成功するのはごく一部の優秀な人材だけですよ。例えば、金融で言うと、欧米の行財政に詳しく、ビジネスレベルで英・独・仏語が自在に操れる人材(そんな人材がいるのか?)。普通レベルの「優秀な人材」ではありません。」→要は、その会社のスター級の人材だけが、転職成功組みといいたいのだろうか。そうすると、各社数名程度では?
 それでは、近年増えている独立成功組、ライブドア、楽天のような成功を収める企業もある。
「僕の知り合いには、独立成功した人なんて、ほとんどいない。そもそも、サラリーマンとというのは、会社に守られている存在。企業というのは、年金や保険、福利厚生に年収と同程度の費用をかけている。つまり、倍程度の手取り(収入?粗利益?)の見込みがなければ、以前と同じ生活レベルは確保できない(?公私混同というか接待交際費等もあるので、少なくとも、税理士をしている限り、一概に2倍の収入がないと、同程度の生活ができないとは言えないようだ。商店街等の店主が高級車等で、同程度の税を払っている会社員より優雅そうな生活を送っていると考えるのは、私だけなのだろうか。)。
 しかも、経理・税務・法務など、バックオフィスに任せていた知識も必要。可能性があるのは、副業収入で、既に給与以上の稼ぎをたたき出しているサラリーマンだけ」(公務員は、副業ができないので、これに当てはまらない。)
 転職でも独立でも、僕らが得することはない、もはや、今の会社にしがみつくしかないのだろうか。
「そのとおり!転職・独立ブームにのって、辞める人で成功はありません。」(明快である。)
 ステップアップのつもりで転職・独立、だが、収入は激減、労働時間は長くなり、福利厚生一切なしという悲惨な事例はごろごろしている。以下の事例を読んで、少しでも思い当たる節があれば、辞表は即刻撤回すべし! 

転職等した300人にアンケート結果

Q1:会社を辞めたいと思ったことがありますか?

(1)ある(88.3%)
(2)ない(11.7%)

Q2:会社を辞めたいと思った理由は?(たぶん複数回答)

(1)給料が安かった(177人)
(2)仕事にやりがいがなかった(121人)
(3)会社の自分に対する評価に不満だった(103人)
(4)自由な時間が欲しかった(65人)
(5)人間関係でトラブルがあった(44人)
(6)ヘッドハンティングされた(16人)
→非常に少ないのが理解できる
(7)会社の将来性に不安があった(15人)
→この理由だけで辞める人は少ないようだ。決断が付かないのだろう。

Q3:転職・起業を後悔している理由は?

(1)年収が下がった
→当たり前である。始めから、十分な収入がある世界などない。年収を保証してくれての転職は、非常にまれである。ただし、保証は、よくて2年間である!あとは、粘れ!意地悪されても、簡単に、退職に応じないのが肝要。

(2)人間関係が煩わしくなった
→当たり前である。日々、新しい人間関係を処理しなければならない。会社だとルーティンで、かつ、限定的である。

(3)自由な時間がなくなった
→当たり前である。他にやってくれる人がいなければ、自分でやるしかない。結果、時間がないことになる。

(4)仕事にやりがいがない
→選択間違いである。自分の責任である。

(5)社内評価が前の会社より低い
→選択間違いである。自分の責任である。

事例編

<事例1>33歳、経営コンサルタント「独立してもだめだった・・・・」

 ――有名コンサルタント会社の看板をすててなお仕事を取れる自身がありますか
 独立後、顧客の大口クライアントは、経営会議の結果「個人だと不安」と彼の元をさった。

→独立を希望するあなた:有名企業の看板はそこいらの道端には落ちていませんよ!
(当たり前である。看板で仕事をしていることが分かっていなかったのかな?やはり、名前が先にでてくるスター級のコンサルタントで無いと、個人企業(法人でも)として難しいようだ。)

<事例2>39歳、運送業「不振企業に見切りをつけてもダメだった・・・」

 ――その会社で働いているあなたに見切るほどの眼力があるんですか?
「辞めた1年後に会社(パチスロの装置販売会社)は上場し、しかも、株価は天井知らずの急上昇。自社株をもっていたが、紙くずだと思っていて、退職時に手放してしまっていた・・・・」

→見切りをつけようとしているあなた:本当に見切れていますか?見切られていませんか?
(お気の毒としていいようがない。が、自己責任である。)

<事例3>38歳、運送業「ヘッドハントされてもダメだった・・・」

 ――うち来いよ!の誘いを、それはいい話だと思い込んでいませんか?
 中堅建設会社の社長から「息子と一緒に会社をもりたててほしい」とヘッドハントされたが、転職後、その事実を知っているものはおらず、(息子をもりたてるどころではなく)地方でタコ部屋のようなところに泊まっての営業まわり等、結局、3年半で退職。ヘッドハントと「ヘッドハントみたいなもの」は、似て非なるもの。もっと早く気づいていれば・・・・

→ヘッドハントされているあなた:あなたが受けている話、ホントに現実味があるの!?
(この種の話は、よくあるようである。税務の世界だと、先輩のOB税理士等から「近く引退するから、その後を継いでくれ!」と言われて退職。しかし、実際は、小間使いに終始して、一向に引退する気配すらなく、安月給で働くのもばかばかしいので、そこを退職して、細々と事務所を開業というもの。そのとおり成功した事例はよく知られているが、実際には失敗事例が多いようなので、注意が必要!周りから十分な情報を収集する必要がある。「美味しい話は、そこらに転がっていない!」のではないか。)

<事例4>29歳、無職「(大手銀行を退職して)資格を目指してもダメだった・・・・」

 ――資格だけで就職できる時代は過ぎてしまったと気づいていますか?
 大手銀行の貸し渋りの現場仕事に嫌気がさし、公認会計士を取得するため退社するも、4度目の資格浪人が決定し、いまだに無職の生活。

→資格を取りたいあなた:吉野家の豚丼さえためらう生活我慢できますか?
(現在の資格No1は、弁護士だろう。しかし、個人営業の弁護士は、一定の顧客を獲得するまで期間がかかる。公認会計士で、大手監査法人以外で働いている者で、監査収入だけで生活している人間は、どのくらいいるのだろうか。大量発生の公認会計士と弁護士で、そのうちのかなりの人数が税務の世界に参入してくると言われている。税理士も辛いよ!である。)

<事例5> 29歳、無職「ベンチャーに行ってもダメだった・・・・」

 ――将来性と倒産確率は同じ意味だって知っていますか?
 中堅システム会社に就職したが、長年の下請けの開発に飽き飽きして、今年、上場予定という触れ込みのITベンチャーに転職。しかし、入ってみてビックリ。開発したというシステムは販売価格が高すぎる割に、素人でも簡単に作れるようなシロモノだったのです。・・・案の上、このシステムはまったく売れず、・・・優秀な人が集団で辞めていき、・・・将来性も何もない、あまりにバカバカしくなり、辞めました。ITベンチャーって、どこも外面と内面が違いすぎますよ。

→ベンチャーに憧れているあなた:上場「予定」は、上場「未定」と一緒なんですよ!
(だからこそ、ベンチャーは面白い、という見方もあります。内容のない会社が、知らないうちに優良企業に変わる?こともあるかな?)

<事例6>32歳、無職「公務員になってもダメだった・・・・」

 ――安定しているのは給与だけって書いてありませんでした?
 市のお偉いさんだった親戚のコネで転職したのが間違いでした。・・・ところが、職場の実情は安定とは程遠かった。役所内は、市長派と反市長派で真っ二つ。派閥争いに巻き込まれてしまったのだ。仕事は、前職(保険代理店の営業)に比べものにならないくらい楽でした。9−5時で年収400万円なんて今時ないですよ。ただし、市長派幹部の親戚という理由で、反市長派の職員からイジメにあったのは計算外でした。・・・不眠に陥り、ノイローゼ状態になり、心療内科に通うまでに追い込まれ、「自律神経失調症」で半年休職後、退職した。採用時に縁故採用のリスクは頭をよぎったんですが・・・・

→公務員を目指しているあなた:派閥争いはどこにでもある!安定はどこにもない!
(これは、地方の小都市の公務員という例外だろう。大丈夫!能力のない人(なさそうな人)は、最初から公務員に中途採用されませんから!残念!)

総括

 雑誌社は、流石に記事の作り方がうまい。当たり前のことを、さも特別なように掲載する。
 やはり、転職・企業にはリスクがあるという当たり前のことに行き着くのではないか。そして、今の職業にとどまっているのも、最近の激動の時代では、リスクであることを認識すべきだと思う。

(2004年12月12日)