日米租税条約の改定

 平成15年6月11日?、日米租税条約の改定交渉が合意に達した。
 そこで、その内容を新聞記事等によってフォローしてみる。

日米新租税条約最終案 米子会社の配当課税免除 2005年適用めざす

(出典:日経朝刊 平成15年10月30日)

最終案のポイント

<源泉地課税の免除>
・両国親子会社間の配当(50%超出資の場合)
・日米をまたぎ金融機関などが受け取る利子
・商標などの使用料
<移転価格税制>
・親子企業間などの取引価格で米当局の調査対象に制限
<租税回避の防止>
・源泉地免税を悪用した課税逃れを両国で防止

 移転価格税制の項目が入っていたことが、意外!米国側の譲歩である。

源泉地課税の免除

 日米両政府は、投資交流の促進や二重課税の防止をねらった新租税条約の最終案を固めた。
 日米の親子会社間の配当に対して、今は両国で課税しているが、出資比率50%超なら子会社側の国は課税を免除する。
米子会社をもつ日本企業は、米国での納税額が減り、税務負担も軽くなる。

 親子間の配当に対して、今回、米国で免税されたからといって、それは、配当の支払段階での源泉税が免除されるだけで、最終的に、親会社で法人税を支払うことになることから、実質的な負担は、変わらないといわれている。
 ただし、源泉徴収がなくなると、二重課税の解消まで、約1年近くかかったのが、その期間がなくなるという意味で(実質的に、税額控除されるまでの金利負担がなくなる。)企業の負担は軽減されることになる。

 新条約では、資本関係の薄い現地法人などからの配当に対する源泉地課税の軽減も盛り込む。現在の15%の税率を10%程度に下げる見通し。
 日米間で金融機関などが受け取る利子は源泉地課税を免除する。
 商標や特許などの使用料(ロイヤクティー)も免除対象。

 金融機関の定義の如何?
 いわゆる消費者金融が含まれるのかに、注目!
(現行の条約では、使用料条項からリース料が除外されて、結果的に、コンピューターのリース料が多額だったIBMに利があったように漏れ聞くが、今回は、消費者金融の雄であるGEキャピタルが金融機関に含まれるかが焦点になりそうである。私見では、OECDのPEに帰属する利益の検討の中で、金融機関の定義には、消費者金融機関も含むことが大勢のようである。そうであれば、今回も、当然消費者金融も含まれると考えるべきであろう。)

 日本政府は減免措置をアジア各国などとの条約にも導入していきたい考えだ。

 日本企業の積極的な対米進出などを背景に、日米間の配当・利子の受払いは日本側の大幅な受取超過になっている。このため、配当・利子への源泉地課税の減免は、日本の法人税収のプラス要因になりそう。
 一方、ロイヤルティーは、(日本側の圧倒的な)支払超過なので一時的にはマイナスに働く見通しだ。

 これは、当然、相手側が税収減を盾に譲歩しないだろう。相手に、何もメリットがないからである。OECD型の租税条約の限界か?やはり、アジア各国などの発展途上国は、国連モデルか?
 今回も、日米でギブ・アンド・テイクに落ち着いたようである。当然である。

 移転価格税制

  国際企業がグループ内の取引価格を操作して税負担の思い国での所得を減らす動き封じる「移転価格価格税制」では、新条約で、税務当局の調査・課税権限に一定の制限を設ける方向。米当局は、無期限に過去に遡って調査・課税することができ、取引価格が適正だったことを立証する責任は、企業側にある。
 新条約では、調査・課税の対象期間に一定の制限を設ける見通しだ。

 移転価格税制の項目が入っていたことが、意外!米国側の譲歩である。
 米国サイドで、今回の改訂を切望していたことが窺えるところである。

 租税回避の防止

  日米の源泉地課税の免除を悪用した第三国経由の課税逃れを防ぐ手立てなども盛り込む。

  トリティショッピング条項の導入であるが、国内での執行のための、つなぎをどう手当するのであろうか。

改正租税条約10月署名めざす 日米財務省一致

(出典:日経朝刊 平成15年9月2日)

 来日中のスノー米財務長官は一日、塩川正十郎財務省らと会談し、日米間の投資交流の促進を狙った改正租税条約を10月に署名できるよう手続きを急ぐことで一致した。

 内容が中々公表されない理由が理解できた。細部で、まだもめているのだろうか?

日・米新租税条約締結交渉の基本合意について

(出典:財務省ホームページ 平成15年6月11日)

1. 5月27日〜6月3日、ワシントンにおいて、日本と米国との間で、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約」(昭和47年条約第6号)に代わる新租税条約の締結に係る第4回交渉が行われた結果、基本合意に至りました。

2. 新条約は、現行条約の内容を全面的に改めるものであり、基本合意された内容は、OECDモデル条約を基本としつつも、戦略的パートナーである日米両国の緊密な経済関係を反映して、積極的に投資交流の促進を図り、併せて租税回避の防止のための措置をとるものとなります。
 新条約においては、日米間の配当、利子及び使用料の支払における源泉地国課税(源泉徴収税率)が大幅に引き下げられ、特に使用料、一定の親子間配当及び一定の主体の受け取る利子については源泉地国免税となります。

3. 今後、両国政府部内における必要な手続を経た上で署名が行われ、条約の内容が確定することとなります。その後、国会での審議を経た上で、新条約が発効することとなります。

問い合わせ先 : 主税局国際租税課
03-3581-4111 内線2453

 財務省のホームページに記載されていたものです。

(1)使用料は、全額免税
(2)親子間配当は一定のものが免税
(3)一定の(課税)主体が受け取る利子も免税

子会社配当課税を減免 日米租税条約改正で合意

(出典:日経夕刊 平成15年6月11日)

 日米両国の財務省は、日本時間11日午前、租税条約の改正で合意したと発表した。
 日米の親子間の配当や利子について課税を一部免除するほか、税率を引き下げる。商標・特許・著作権などの使用料(ロイヤルティ)については課税を撤廃する。両国で批准手続を進め、来年中にも新条約発効を目指す。
 日米両国は30年以上前に締結した現行条約がグローバル企業の実態に合わなくなったとみて、2年前に改正交渉を始めた。
 現行条約では、米国企業の在日子会社が親会社に支払う配当に日本が税率10%で課税、米国も日本企業に同一条件で課税している。条約改正後は、親子間の支配関係が明確な一部の適格企業について免税とし、その他の企業でも税率を引き下げる。
 日米の親子間の利子の支払について現行は税率10%で課税されている。改正後は金融機関などについて課税を免除する。

 利子
・適格企業は免税、それ以外でも税率引き下げ

商標料 免税扱い 日米租税条約を全面改訂へ

(出典:日経朝刊 平成15年6月11日)

 日米両政府は、日米租税条約の見直し交渉で最終合意した。
 日米間の親子会社間の商標・特許などの使用料(ロイヤルティ)について、日米双方がこれまで税率10%で課税したのを免税扱いにする。直接投資に対する配当課税などの税率も引き下げる。
 両政府は、来年中の新条約の発効を目指している。日米租税条約の全面改訂は、前回1971年以来33年ぶり。租税条約についてはグローバルに活動する企業の展開を阻害するとして、米国側が条約改定を求めていた。
 税率の引き下げは、米企業に対日投資の収益向上を意味することから、小泉政権が推認する外国企業の対日投資促進にもつながるとみられる。
 今回の改訂では、現行条約制定時には想定されていなかったデリバティブ(金融派生商品)など新たな金融取引に対する課税についても扱いを取り決めた。 

 使用料は、現行の10%から免税へ