国税当局 米投資組織(個人・法人共同出資のLPS)は「法人」 名古屋 社長の申告漏れ指摘
(出典:朝日朝刊(日経夕刊) 3月22日)
米国の共同出資組織であるリミテッドパートナーシップ(LPS)に出資していた名古屋市内の会社社長が、国税当局の税務調査を受け、01年までの3年間で約2億円の申告漏れを指摘されていたことが分かった。
LPSによって所有するアパートの減価償却費などを社長個人の所得の赤字として計上することが認められなかったという。社長は、処分を不服として国税不服審判所に申し立てた。
日本には、LPSと同じ組織はないものの、国税当局は形態からLPSを「法人」と初めて認定。「減価償却費などによる赤字はLPSに属するにもかかわらず、社長の所得に計上したのは所得を圧縮するための税逃れ」と判断した模様だ。
専門家によると、LPSを利用する日本の投資家はバブル以降増えている。
関係者によると、社長は96年、証券会社の紹介で米国の不動産業者とデラウエェア州でLPSを設立。不動産業者が経営、社長が約6億円を出資し、テキサスやアリゾナ、フロリダの3州で賃貸の中古アパート約800戸の所有者となった。
社長は毎年、賃貸料などの収入から建物の減価償却費などを差し引いた年間3千万〜6千万円の赤字と、給与などを合算して所得を圧縮していたという(注1)。
また、LPSから受け取った年間の分配金4千万円を申告していなかったとされる(注2)。
国税当局が、LPSの実態を検討した結果、(1)財産をもつことができる、(2)裁判の当事者になれる、(3)商行為のためにできた事業一体などとして「日本の法人にあたる」と認定。さらに、分配金も、法人であるLPSからの配当として申告するよう是正を求めた模様だ。
社長は、朝日新聞の取材に「前回の税務調査ではLPSについて指摘はなかった。LPSを法人と認定した事例は聞いたことがなく、課税すべきではない」としている。
「減価償却費などによる赤字はLPSに属するにもかかわらず、社長の所得に計上したのは所得を圧縮するための税逃れ」とあるが、単に、LPS=法人と認定したのであれば、それは法人に対する出資になる、そこで、その法人の損益はその法人に帰属するので、出資者の所得(赤字)とするのは誤りとなる、程度ではないのか。この場合、利益の分配の時は配当所得、LPSを売却した時に有価証券の譲渡ということになろう。
ことさら「税逃れ」と認定・判断する必要があるのかは疑問。
平成13年6月に、国税庁のHPで、米国のLLC=法人と判断した時の同じ流れの中にある。
それにしても、航空機リース投資の場合と同じように、なぜ、確定申告時(3月15日まで)までに、この情報が公開されなかったのだろうか。
少し勘ぐると、このような情報が公表されると、(課税当局にとって)正しい申告をされてしまうので、調査による「税逃れ」が把握できなくなってしまう→実績が挙げられなくなる、そのため、わざと公表を遅らせたのではないか思ってしまうのは、私だけだろうか。
注1※たぶん、本件投資による所得を不動産所得として所得金額を計算し、不動産所得の赤字は、所得税法上、他の所得と損益通算が可能なので、給与から差し引いて合計所得金額を算出した、ということになろう。特に、所得の圧縮でも何でもない。所得区分を誤ったに過ぎないと見ることもできよう。
注2※わが国では、法人からの分配を「資本の戻り」と利益の分配の任意選択できる規定がないようである。本件でも、法人からの分配であるので、当然、利益の分配として、配当所得として課税したものであろう。結局、赤字も認められず、分配金は配当とされ、バブルパンチの課税となったようである。納税者が怒るのももっともだ、と思うが、指導した専門家はどうなったのだろうか。