給与、退職金と申告 外資系証券元社員180人 数十億円を追徴課税

(出典:日経朝刊 10月2日)

 外資系証券会社の日本法人に勤めていた外国人が給与の一部を税率の低い退職金として申告していたとして、東京国税局が5社の元社員約180人に申告漏れを指摘し、計数十億円を追徴課税していたことが一日分かった。
 追徴かぜいされたのは、クレディ・スイス・ファースト・ボストン、ドレスナー・クラインオート・ワッサースタインなど5社の外資系証券会社の外国人の元社員。
 関係者によると、これらの会社の元社員は、ファンドの運用実績などに応じ報酬が支払われる契約を結んでおり、実績がよければ年間数億円単位の報酬になるケースもあるという。このため、報酬の一部を給与として払わずにプール。本国に戻る時など日本法人を退職する際に給与所得の半分以下の税率になる退職金として受け取ったことにして申告していたという。申告漏れは、一人当たり数千万円から数億円だという。

 記事で、「給与の一部」と書いてあるところが、ポイント。始めから給与なら、課税の繰り延べができない。しかし、報酬となると別という見方もある。当然のことながら、元会社員らは、「報酬の一部」と主張しているだろう。
 もう一つのポイントは、外資系の証券会社。外資系の証券会社については、大手の会計事務所の一つが圧倒的に支配、関与していたことは有名である。当然、その会計事務所の売り込んだスキームなのだろうが、どうやって、反論などの後始末をするのだろうか。
 ところで、外国人社員の日本での税金は会社が負担しているのが通常である。当然、今回の追徴分も、会社が最終的に負担(=追加の給与の支払とみる)することになる。そうすると、当該外資系証券会社の法人税の所得金額の算定上、損金に算入されることになろう。
 そうであれば、国家財政全体で見ると、この種の会社が税金を負担する報酬について、本人が支払わなかった部分について法人が負担した場合、グロスアップさせることなく、法人税の方で、単に損金不算入とするのが、スッキリするのではないか。
 そろそろ、税引き手取りの取扱いはやめて、会社負担分は、損金不算入ということも考えていいのではないか。所得税で追徴しても、法人税でその分認めていたら(当然全額ではないが)、納税者サイド、当局サイドの手間だけ沢山かかって、国家への純歳入はそれほどのものでもなく、全体としてみると社会的な損失が大きいのではないか。