シティ救済が狙い? サブプライム支援基金 リスク分散で時間稼ぎ
(出典:日経金融 10月17日)
シティグループなど米大手三銀行が短期金融市場安定に向け、特別基金の設立を打ち出した。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題で塩漬けになった有価証券を1千億ドル規模で買い支え、市場の機能回復を助けるという。危機に瀕した運用会社を抱える金融機関救済という意味合いも持つ。
特別基金の買い取り対象は、SIV(ストラクチャード・インヴェストメント・ビークル)と呼ばれる特殊な運用会社の資産。多くは大手金融機関がタックスヘイブンなどのオフショアに設立し、本体とは連結対象外だ。
だが、サブプライム問題で信用市場が機能不全を起こし、SIVが調達手段とする資産担保コマーシャルペーパー(ABCP)の流通がほぼ完全に停止。母体銀行の信用供与なしでは調達できなくなり、連結対象にすべきとの議論が出始めた。
特に影響甚大なのがシティだ。1980年代にこの運用形態を開発した元祖で、傘下の7つのSIVの資産は約11千億ドルと世界全体の4分の1を占める。これほどのリスク資産が一挙に連結対象となると、大幅な自己資本の積み増しを迫られるだけに、基金の設立で最大の恩恵を受ける。
特別基金がSIVの塩漬け資産を束ねることで、個々の金融機関をリスクから解放させる。それで流動性に窮したSIVが手持ちの住宅ローン担保証券(RMBS)などを投げ売りする事態を避けられる。実際、一部のSIVがRMBSを大量処分し、極端に安い実勢価格をつけたことが、欧米金融機関の巨額評価損の一因とされる。SIVに直接関与しない金融機関への影響も大きい。
問題は、特別基金が引き受けるリスクがどこへ向かうかだ。
有価証券の買い取り資金は、通常のSIVと同じく短期債を発行するが、詳細は不明。公的資金は投入されない。11千億ドルもの調達や債券の保証を考えると、結局大手金融機関が何らかの形で再びリスクを負う公算が大きい。
個別行に集中しすぎたリスクを業界全体で分担し、信用不安が去るまで時間を稼ぐ構図なのかもしれない。
マスコミは、サブプライム問題は山を越えたという風潮の中で、10月16日の新聞で米財務省主導のサブプライム支援基金、約10兆円の設定が知らされた。
なぜだろう、と考えていたら、シティ関連の資産は1千億ドルとある。これがオフバランスになっている。資金調達できないので、シティの連結にしろ、との議論。
さもありなん、と思ってしまった。流石、米国はやることが早い。経済界と一体の共和党政権だけのことはあると一人合点してしまった。
世界の金融界ではオフバランス・手数料ビジネスが潮流であるが、こんなところで、思わぬ伏兵がいたものである。
米国の金融界でも支援基金の設定に反対するものがあるというのもうなずける。