46億円追徴 取り消し 東京地裁 東京海上の経費認定
(出典:日経朝刊 11月28日)
海外子会社と結んだ地震再保険契約の保険料を損金扱いせずに課税したのは違法だとして、損害保険大手の東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)が東京国税局に約46億円の追徴課税の取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は27日、保険料を経費として認め、追徴課税を全額取り消すよう命じた。
判決理由で「海外子会社との再保険契約は、地震が生じた場合に会社の収支が著しく悪化することを防ぐためで経済的合理性がある」と指摘。保険料支払いは課税を逃れる目的ではなかったと判断した。
東京海上46億課税取り消し 東京地裁 再保険料 経費と認定
(出典:日経朝刊 11月28日)
企業向け地震保険をめぐり、東京国税局から所得隠しを指摘された東京海上日動火災保険が、追徴課税処分の取り消しを求めた訴訟の判決が27日、東京地裁であった。裁判長は、東京海上側の訴えを全面的に認め、約46億円の課税処分取り消しを言い渡した。
判決によると、東京海上は、地震が発生した場合に企業に支払う保険料が巨額になる危険性を分散させるため、保険料の保険となる再保険契約をアイルランドの100%子会社と締結。子会社は欧州の損保との間で、地震が起き慣れれば保険料の大半が返還される「ファイナイト型」の再保険契約を結んだ。
東京海上は子会社に支払った再保険料を経費として損金処理したが、東京国税局は「地震がなければ変換される再保険料は「預け金」に当たり損金処理できない」として、子会社を介在させた所得隠しと判断。平成13年3月期までの4年間にわたり追徴課税した。
裁判長は「収支悪化を回避しつつ利益を最大にする枠組みとしては合理性がある」と指摘。「再保険料は経費にあたる」と判断した。
平成15年の記事「東京海上40億円所得隠し 国税局指摘 新型地震再保険で『誤解』審査請求」が審判所では認められず、訴訟で取り消されたようである。このまま確定するのだろうか。
当初の課税からすると5年?で第一審判決である。その間の訴訟費用はどのくらいかかるのだろうか。訴訟費用を考えると、簡単には誰でも訴訟に進めない現実があるようだ。
所得隠し120億円 香港口座で利益付け替え 福井のAV機器メーカー
(出典:日経夕刊 7月30日)
AV機器メーカーの「オリオン電機」(福井氏越前市)が金沢国税局の税務調査をうけ、利益の付け替えがあったとして、2006年3月期までの7年間で約120億円の所得隠しを指摘されていたことが30日わかった。
金沢国税局は、重加算税などを含め約40億円を追徴課税したもようで、同社は修正申告したという。
関係者によると、オリオン電機は、海外の現地法人で製造したテレビなどの売上の一部を、法人税税率が低いタックスヘイブン(租税回避地)の香港にある関連会社に振り込んでいたという。香港の会社はオリオン電気と資本関係がないが、営業実態がなく、同社が実質的に管理していたとみられる。
金沢国税局は、利益を付け替え意図的に所得を圧縮していたと判断し、重加算税の対象としたとみられる。
追徴税額から判断すると、繰越欠損金部分の否認額がかなりあったようだ。
通常、海外の現地法人で製造した製品の販売利益は、海外現地法人の売上に計上される。したがって、その売上の一部を除外したとしても、「当該現地法人の売上計上もれ」とされるものといえ、内国法人であるオリオン電機の売上計上もれとされるには無理があると思われる。
新聞記事からは、なぜ、否認できたのかよくわからないが、要は、実質的に内国法人であるオリオン電機が管理する香港の口座に入金されていたので、オリオン電機の収入として認定したということだろうか
金融庁 対日投資を促進 法人税非課税4条件発表
(出典:日経朝刊 6月28日)
金融庁は、27日海外ファンドなどの投資家が対日投資した際、運用益に係る法人税を非課税とする4条件を正式に発表した。
日本の投資運用業者を通じて投資することが大前提となる。課税か非課税化を判断する際の「線引き」を明示し、海外の投資家が投資しやすい環境を整える。
(4条件)
(1)国内の投資運用業者に投資判断を一任する部分が多く、実質的に海外投資家が直接の投資行動を取っていないこと。
(2)委託先の国内投資運用業者で役員に占める海外ファンド出身者などの割合が5割未満にとどまっていること。
(3)国内の投資運用業者が投資家と成功報酬契約を結んでいること。
(4)国内の投資運用業者が特定の海外投資家に依存せずに多角的な経営ができていること。
金融庁、財務省、国税庁は7月4日に海外投資家などに対する説明会を開催する予定。4条件の解釈をより具体的な事例で解説した事例集を示し、投資家の理解を助ける。国税庁は、海外投資家などからの個別の問い合わせにも応じる。
金融担当相は、27日の記者会見で、「日本でのファンドマネジャーの活動が促進される」と述べ、今回の非課税措置が市場の活性化につながるとの期待感を示した。
わが国と租税条約を締結していない国からのわが国への投資を促進させる狙いのようである。
ブルネイとの租税条約の締結の合意が昨日新聞報道され、来年以後の発効を目指す動き(ブルネイからの資金導入等)と連動するようだ。
7月4日の説明会で、より具体的な指針等が示され、日本市場の活性化が促進されることが望まれる。
一方、20年の税制改正で、海外SPC経由の資金導入が所得税の課税の対象とされていることは、雑誌等であまり注目を集めていないようだ。
直接関係者に聞いたわけではないが、海外SPC経由の国内への資金の流入が激減してきているようだ。この部分は、法人税ではなく、所得税だから問題はないというスタンスなのだろうか。
推測するに、海外からわが国に投資ファンド形態で投資する場合は、(タックスヘイブンのSPC経由ではなく、)金融庁の指針に示された、(海外ではなく)国内の投資運用業者経由で、かつ、4つの非課税条件に則って、国内へ投資しろ、と言っているようだ。
これで、本当に、国内投資が促進されるのだろうか。
法人税非課税に4条件 国内委託先独立性求める 海外からの対日投資促進 政府、新ルール創設
(出典:日経朝刊 6月11日)
政府は、海外の投資ファンドや企業による対日投資を促進するため、海外投資家課税の運用を見直す。海外投資家が日本国内の運用業者に委託して株式や債券などに投資する場合、国内業者が独自の判断で運用したことを示す4条件を満たせば、運用益に法人税を課さないことを明示する。あいまいだった運用方法をわかりやすくして投資資金を呼び込み、東京市場の活性化につなげる狙いだ。
財務省と金融庁が課税の運用基準を作成し、月内にも適用する。
海外投資家課税については、ヘッジファンドなどの海外投資家が国内運用業者(登録業者)と投資一任契約を結び、運用業者が投資から独立していれば、法人税を徴収しない大原則がある(注)。だが、従来はどのような場合に「独立している」と認定するか、明確な基準がなかった。
政府は、非課税の基準を明確にするため、次の4条件を明示。
海外投資家を非課税にする4条件
(1)国内運用業者が実質的に意思決定をしている。
(2)運用業者の役職員の半数以上は、海外ファンドなどと兼務していない。
(3)海外投資家と運用業者が成功報酬契約を結んでいる。
(4)運用業者が特定の海外投資家に依存せず、多角的な運用ができる。
政府は、(20年税制改正により)中東諸国など租税条約を結んでいない国・地域の投資家についても、運用益を非課税にする道筋をつけたが、今回は、一歩進めて、具体的な運用基準を規定し、租税条約の有無を問わず、すべての海外投資家の非課税基準を明確にした。
さらに詳細な解釈についても、細かい事例を示して海外投資家の理解を助ける
政府は、海外からの投資をさらに呼び込み、国内市場の取引の活性化するには、国際標準の考え方に沿った課税基準の明確化が必要だと判断した。
(代理人PEの非課税とされる場合の細目に関するものです。)
20年の税制改正において、代理人PEの要件が改正されている。
具体的には、法令186の本文柱書の中で、各号に掲げる者(その者が、その事業に係る業務を当該各号に規定する外国法人に対し独立して行い、かつ、通常の方法により行い場合における当該者をを除く。)、と規定されている。
これだけでは、当然、どのように運用されるか予測できないので、今回の基準の策定になったものと思われる。
4つの条件は、それぞれもっともなものが挙げられているが、個別・具体的で詳細な基準が示されないと、相変わらず「灰色」の部分が残り、調査での事実認定の比重が大きくなり、投資家の不安はなくならないだろう。近く解釈が金融庁等から公表されるらしいが、これらの措置によって、海外からの投資が加速するとは信じられない。
それ以外の分野での、国内企業の企業防衛等が顕著で、投資物件としての日本市場がそんなに魅力的かどうか疑問だと思うからである。
なお、「国際標準の考え方に沿った課税基準の明確化」とは、OECDの租税条約に関するコメンタリーを言うのだろうが、そんな具体的な基準が書いてあったのだろうか。
注※平成20年の税制改正後のもの。改正前は、独立の有無は関係ないと解釈されていた。ただし、租税条約の適用のある国の居住者(法人)の場合、通常、独立していれば法人税が課税されない。
武富士元会長の長男敗訴 逆転判決「住所は都内」
(出典:産経朝刊 1月24日)
消費者金融大手「武富士」の元会長とその妻が、平成11年に長男に贈与した外国法人の株に対する約1330億円の追徴課税処分をめぐり、処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が、23日東京高裁であった。
裁判所は、課税の取り消しを命じた1審・東京地裁判決を取り消し、課税を適法とする逆転判決を言い渡した。
原告は、上告する方針。
当時の税法では、日本人でも海外に住んでいれば、国外財産の贈与は非課税扱いになっていた。長男は、贈与を受けた前後の3年半の間、65%以上は香港で生活しており、長男の事実上の住所が国内にあったかが争点となった。
判決では、長男の香港滞在の動機を「贈与税回避計画を考慮していた」と認定。「このような状況では、滞在日数のみで住所を判断すべきではない」との判断を示した。
その上で、長男が(1)日本滞在時には都内の自宅で生活していた、(2)元会長の跡を継いで武富士の経営者になることが予定されていた、(3)資産の99.9%以上は国内にあったーなどの外形的事実を指摘し、「事実上の住所は都内の自宅だった」と結論づけた。
判決などによると、元会長らは、所有する武富士株を実質支配するオランダの会社に移転。長男は、平成11年12月、同社の発行済株式の約9割を贈与された。これにより、時価約1650億円相当の武富士株が長男に移動したが、長男は贈与を申告しなかった。
武富士元会長の長男の贈与税の無申告事案の控訴審において、課税庁が逆転勝訴した。
納税者は、当然のことながら、上告するようであるが、事実認定を争点として上告できるのであろうか。
画期的な判決と言えるだろう。
いろいろな点について、反論等があろうが、裁判所は、金額の大きさ(インパクト)に引きづられたのではないか。
当初の課税された時の記事においても指摘しておいたが、所得税の住所の意義と相続税法上の住所の意義が、通達で明らかに異なっていることから、当局の対応の違いも予想されたものといえるのかも知れない。
今回の判決を受けて、当分の間は、租税回避を理由とする課税処分を当局は主張してくるであろうが、いつ、どのような場合も、このような認定になるとは思いたくないが、これから住所を国外に移す人は、今回の判決に十分留意する必要があるだろう。